ショップコンセプトがお店の品揃えを決定する


VMDの学校、売場塾が唱えるVMDのあり方は、ショップコンセプトをベースとしています。
これを「コンセプト・オリエンテッド」と言っています。

商品は、小売店というハコの中で売られています。
ドラッグストアというハコ、スーパーというハコ、コンビニというハコ・・・。
ブランドで言うと、無印良品というハコ、ユニクロというハコ、伊勢丹というハコ・・・。

品揃えとは、マーチャンダイジング(MD)といい、「ハコの中に何を置いて売るか?」という考え方です。

この品揃え、売れれば何でも置いていい、というわけにはいきません。
ハコはブランドというものでできていて、ブランドはブランドコンセプトからできています。

例えば、東急ハンズは「ここは、ヒント・マーケット」というブランドコンセプトを唱えています。
●東急ハンズのコンセプト

東急ハンズにいつもに個性的でおもしろい商品が並んでいるのは、このコンセプトがあるからです。
ここに普通のトイレットペーパーは売ってないですよね。
あるとしたら、おもしろいトイレットペーパーです。
●東急ハンズのトレペ

そのお店らしい商品が並んでいないと、そのお店のファンであるお客様はがっかりしてしまいます。
普通のトレペを買うならここに来る必要はありません。
安いドラッグストアに行くでしょう。

上の図を改めて見てください。
ファネル(じょうご)があります。
これは「ショップコンセプトファネル」といい、品揃えはじょうごを通して行うという、フレームワークを示しています。
「そのお店らしくない」商品を仕入れて棚に並べてしまう行為は、そのお店が好きで来るお客様をがっかりさせてしまい、次からは来なくなることを意味します。
しっかりショップコンセプトをつくり、そのじょうごを通して商品を仕入れるのが正解です。

こんな話がありました。
2001年、無印良品は売り上げ減で苦しんでいました。
38億の赤字に陥ったのです。
そんな時、「うちはモノトーンや生成りの服が多いから、赤や青のビビッドな服を売れば、売上は回復するのではないか」ということで、カラフルな服を仕入れ始めました。
すると、来店したお客様は「こんなの無印じゃない」と踵を返して、ますます遠ざかる要因となったのです。

そんな時、松井忠三という人が良品計画の社長になり、店を一からやり直そしました。
松井さんがやったことで有名な話は、コンセプトに合わない服の在庫を焼却炉に持っていき、山のように盛り上げ社員のいる前で燃やしてしまったことです。
それを見た社員は涙を流し「二度とこんなことはすまい」と誓ったのでした。

その後、無印良品はコンセプトに忠実な商品を仕入れ、運営マニュアルをしっかりつくってV字回復したということでした。
詳しくは「無印良品は仕組みが9割」というベストセラー本があるので読んでみてください。

私たちVMDインストラクターもこれと同じような考えです。
店舗診断をする際は、「コンセプトに合わない商品は取り扱わない」というアドバイスをしています。

●オーバルリンクの店舗診断

世の中の店は、コンセプトと違う商品が店内にゴロゴロしています。

ある時、
売上に苦戦しているおもちゃ店のVMDインスタラクターをしていました。
そのお店は、コンピュータを使いながら子供を教育していくという、PC玩具に特化したお店としてオープンしました。
ところが売上は芳しくありませんでした。
そこで、当社が「世界中から子供に役に立つおもちゃを」というコンセプトに沿って店名を変えVIを変え、VMDを見直して店舗をリスタートしました。
ショップコンセプトに沿って品揃えを半分以上変えたのです。
するとあっという間に月間売上は2倍になりました。

同店の品揃えに関して言うと、コンセプト通り電気おもちゃの商品は取り扱いをやめ、世界上から知育玩具をたくさん集めたのです。
PCの代わりに木や粘土のおもちゃが増えていきました。
それと並行して、ゾーニングや定数・定量、PP・IPなどMDP(ディスプレイ)やSD(ショップデザイン)も変えたのです。
この成功を踏まえてその後、このお店はチェーン店を増やしていったのです。

いかがですか、この話。
私たちのVMDインストラクターはこんな事例でいっぱいです。
品揃えをカットして売り上げが増える。
それは、ショップコンセプトをきっちり見直して品揃えを明確にするからに他なりません。

(vmd-i協会事務局)