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VMDインストラクター 竹内美香さんを取材しました2012年10月

VMDインストラクターの ファッションスタイル考

VMDインストラクター 竹内 美香さん

竹内 美香さん

カラースクール「A−color(エーカラー)」代表

VMDインストラクター

メラビアンの法則

 いつもは、VMDインストラクターのワークスタイルを追求している本編だが、今回は、ファッションスタイルを追求してみたいと思う。というのは、ふとVMDインストラクターをイラストで描いたらどういう風になるのか想像してみたかったからだ。

 書店の就職コーナーには、いろいろな資格本があり、インテリアコーディネーターやカラーコーディネーターが表紙を飾っている。例えばカラーコーディネーターは、丈の短いカシュクールワンピにカラフルなバギーパンツを履き、髪をジオメトリーのスカーフで縛った女性として、イラストで描かれている。手に色のついた布を数枚持ち、黒板に掲げたカラーチャートを指示棒でつつきながら生徒に説明しているシーンになっている。

 これを見た人は、カラーコーディネーターとはこういうアーチストのような人なのか、と思うだろう。私たちは普段、特定の職業人のイメージをこんな風に、本や雑誌から抱いてきた。  ところが、VMDインストラクターのイメージは?というと、あまり定着していないのが実情だ。それもそのはず、日本ではまだそんなに知られていない職業だからだ。そこで、今回は、プロのカラーアナリストの力を借りて、VMDインストラクターのイメージを推察してみたい。VMDインストラクターのモデル像について語ってみたいのだ。

 そもそも、一般の方は、VMDというとディスプレイをつくる人と思いがちだ。そのため、デニムパンツにツールバッグを掛け、汚れても大丈夫そうなトレーナーを着ているようなイメージを持つだろう。ひと昔のデコレーターのような感じだ。  でも、VMDインストラクターのいでたちは違う。ディスプレイをつくるというよりも、ディスプレイを教えることの方がメインなので、クリエイターというよりも講師やコンサルタントに近い職業だといえる。

 企業のVMDインストラクターは、文字通り社内で、お得意先で、直営店舗で、売場づくりを教えているし、教室スタイルで研修会を開くことも多い。独立している方は、セミナーに招かれたり、各種学校の授業を受け持ったり、小売店のスタッフを教育指導することが多い。つまり「先生業」が多いのである。

 そんなVMDインストラクターは、どのような格好をすれば、らしいか?それについて追及してみよう。

 まずは、メラビアンの法則から行こう。これは接客や営業研修でよく出てくる言葉で、「人は見た目で判断される」という法則だ。人の第一印象は何で決まるかというと、外見が55%、話し方や声が38%、話の中身が7%だということを、アメリカの心理学者が導いた。

 私自身、思い当たることがある。最近は、アパレル会社のVMD担当として売場塾の卒業生を推薦することがあるが、人事面談のあと、服装を指摘される人がいる。「もっとカジュアルな服装で来てほしかった」「服装のセンスを上げてほしい」などという声が上がるのだ。アパレル会社のブランドのVMD担当としては、コーディネートセンスがよくなければ、売場のディスプレイも期待できないからだ。

 高級なブランド服を着なければいけないというわけではない。トップス、ボトムス、インナー、アウターのコーディネートをセンスよくまとめなければいけない、といっているのである。なのに、ネイビーかグレーのリクルートスーツで挑む人も多い。キャリアのある方なら、それらしいコナれた服装が要求されるのに、である。

イメージコンサルティング

 売場塾の卒業生に、ファッションセンスがピカイチの人がいる。その方は、竹内美香さん。「カラーアナリスト」というプロのスタイリストで、東京の神楽坂にオフィスを構え、企業や一般人のイメージコンサルティングをしている。

 そんな彼女に、VMDインストラクターの服装とはどうあるべきかをアドバイスしてもらった。それによると、「コーディネートは色が肝心です。まずは、人に好印象を与える服の色は何かを見つけることです」とのことだった。

カラーチャート表 論より証拠、私に合う色とは何かを教えていただいた。まずは、写真のようなカラーチャート表を机の上に置いて、どんな色が好きでどんな色の服を持っているか、を訊いてきた。次に、カラフルな色の布を私の顔の近くにあてがって、顔の色の感じがどう変化するかをやりとりした。色のグループは、春・夏・秋・冬の4グループあり、私は冬の色もしくは春の色が似あう、とのことだった。

 冬の色は、鮮やかではっきりしていて、春の色は明るく活発な色が多いとのこと。これは原色好きで、白っぽい肌の私にはぴったりという。つまりハデな顔立ちをしているガイジン顔の私には合う色のグループということだった。 「肌の色が明るく、若々しく感じる服の色の方が、相手に好印象を与えますので、商談や講義がスムーズに進みますよ。深沢さん、ぜひこの色にチャレンジしてみてください」  聞くと、企業の社長のイメージコンサルや、ブライダルの衣装のカラーコーディネートもこなしているという。この時も、このように依頼人の肌をよく見せる色の選択から入るようだ。

その上で、今度は、最近の私の講義中の写真を見せて、感想を聞いた。

コーディネート1
「はっきりしている色好きですね。上下でコントラストがついてるので、深沢さんに合っていると思います。でも上がカッチリしているデザインと色でしたら、上はニュアンスのあるトーンとかデザインにした方が収まりがいいと思います。上下ともカッチリし過ぎないように気をつけた方がよいですね」
コーディネート2
「きれいな色をミックスするのが好きですね。この組み合わせは明るくていいと思います。でもやはり上下ともインパクトあるので、どちらかを地味にした方がいいと思います」
コーディネート3
「ネクタイとパンツが同じエンジで、シャツがオレンジぽいです。全体的に秋らしくてよいと思いますが、ネクタイとパンツの色が微妙に違うので、生地感などでニュアンスを付けるのがいかもしれません。写真(下)の方が、上下の色相が相反しているのでメリハリがついています。ソフトなトーンですが、ネクタイの色がアクセントになっていて、この組み合わせの方がよいでしょう。」
コーディネート4
なるほど、らしくていいということだったが、もう一歩配慮が欠けていたようだ。最近原色をコーディネートに多投しているが、「出し過ぎ」ということなのだろう。反省!そして納得。

カジュアルとフォーマルのバランスが大事

 「会う人にどう見せたいのか、が服選びのコツですね。威厳のある先生ぽく見せたいのか、カジュアルに見せたいのか、によっても違います。でも底辺にあるのは、キチンと感、オシャレ感です」 業界によって服の選び方は違うという。アパレルでも、カジュアルブランドとフォーマルブランドのクライアントの前では、服の選定も変えた方がいいという。フォーマルブランドの受講生がいる前で、あまりカジュアルすぎると失礼にあたる。また、カジュアルブランドの受講生の前ではカジュアルもいいが、崩しすぎはよくない。とくに販売員研修のとき、講師があまりに普段着ぽいと生徒と先生の区別がつかないので、そこは一線を画した方がいいようだ。

 「でも、反対にこういうことがありました。商店街の男性幹部向けに、カラーの講義を行うことがありました。キャリアぽいコンサルタントをイメージして、黒を基調にした服装で行きましたが、少しがっかりされました。相手はカラフルな服装を期待していたそうです」

 カジュアル過ぎないのを意識すると、逆にカチッとしてしまう。そのさじ加減が大事ということだ。そういえば、私も経験がある。スーパークールビズが推し進められている昨年から、講義でもノーネクタイなのだが、SCのアパレルテナントの集合研修で、茶色のプルオーバーのピンタックシャツを着て教壇に立ったことがある。これはさすがにカジュアル過ぎた。私が教室に入ったとき、受講生の一人だとみんな思ったようだ。やはり先生らしい服装で登場するのが大事だった。それ以降は、どんな時でもジャケットを羽織って教壇に立つようにした。もちろん後で脱ぐのだが、最初はパリッとキチッと見せるようにしている。

 「インストラクターの方は、カジュアルとフォーマルのラインを知ることですね。試着して眺めて、カジュアル過ぎだなと思ったら、ジレやジャケット、カーディガンなどを羽織る。カチッとし過ぎていたら、カーゴパンツや色ベルトを締めたり、と緩急自在に足し算引き算するのがいいと思います」

 クールビズだからといってすべてカジュアルにしないように気をつけよう!!

普段からシミュレーションしておく

 「人の前に立つVMDインストラクターは、普段からいろいろな服を試して、慣れておくとよいでしょう。普段あまり着ていないデザインや色、アイテムをいきなり着てみんなの前に出るのは逆効果になる場合があります。インナーや靴、パンツやベルトなど少しずつ買い揃えておいて、あれこれコーディネートして試すのがよいです。すると、本番でも好印象の個性的なファッションスタイルをアピールできます」

 セミナー講師を見て、なんとなくコナれていないのがわかる時があるという。サイズのキッチリ感がなかったり、洗練されていないイメージが伝わるそうだ。

 これを聞いてハタと思い当たることがあった。最近私は、アバンギャルド系のシャツブランドのものを着ているが、その中にパイピングが施されているフレンチフライの開襟シャツで、しかも胸上部にボタンがない、男性シャツにしては変わったデザインのものがあった。カジュアルだが、モノトーンなので仕事でも着れるかなと思って買ったが、箪笥の肥やしになっていた。着る機会がないので、執筆した書籍用カバー写真にそのシャツを着たものを載せたのだが、身内の読者からはさんざんだった。「宗教ぽい」とか「ジップアップのスキッパー着ていると思った」などの声が上がった。

 あーあ、せっかく最初に出したVMD本なのに。普通のシャツにすればよかった・・・。慣れていない、とはこういうことを言うのだ。

 それからというもの、女性ファッション誌を買って、個性的なデザインやおもしろい色の服の組み合わせがあれば、その写真を切り抜いてスクラップすることにした。男性誌だと、あまりアイテムやデザインに変化がないので、コーディネートのレパートリーが豊富な女性誌を参考にしたのだ。

 それが的中して、いろいろな色を組み合わせるコツがわかり、バリエーションが増えてきた。あんな色がほしい、こんなアイテムがほしい、と普段は着なかったものを買うようになってきた。例えば、ロックなデザインのカットソーだったり、サファリなものだったり、昔では考えられないワイルド系に今は凝っている。この夏が過ぎたら私のレパートリーもひとつ増えるに違いない。

 「おっしゃる通り、普段からファッション誌を見て研究するといいです。女性誌を男性が見るのもおもしろいですね。アパレル系のVMD講師は両性の雑誌を見ておくのも仕事のようなものでしょうか。あとは、ショップに行き、気に入ったものがあればいろいろ試着するといいです。買わなくてもいいのです。コーディネートを楽しむために行ってください」

 コーディネートのスキルはトライアンドエラーで成長する。服合わせを好きになったらもっと成長する、ということなのだ。

竹内美香さんの仕事

竹内さんの仕事

 竹内美香さんは、カラースクール「A−color(エーカラー)」を開いて、カラーに関する講座やコンサルティングを行っている。もともと、大手百貨店やブライダル企業のカラー研修を行っている会社にいたが、結婚を機に独立した。今年の3月からは神楽坂の目抜き通りを本拠地にした。教室の空き時間は、フリーサロン「プラス神楽坂」として、団体や一般に開放するという二毛作事業を展開している。

 もちろん、売場塾を卒業したVMDインストラクターなので、カラーをプラスしたVMDの研修や店舗診断・指導などもしている。最近は、フードスクールの学校の講師をしていて、食品のディスプレイについても教えているという。

 「カラーが本業なのですが、VMDはそれに次ぐ柱。陳列や展示に関する色の悩みは、アパレル企業のみなさんに関しては、特に多いようです」

フリーサロン「プラス神楽坂」

 実は、彼女ときどき私の仕事も手伝ってくれていて、OJT(現場指導)や研修にインストラクターとして来ていただいている。いつもキチンとしていて品があり、モダンな感じがするコーディネートをされているので、これはいつか訊いてみなくては!という思いで今回の企画になった。大変勉強になりました!

 彼女、個人の方でもコーディネートのアドバイスをしてくれるそうだ。受講生にいい印象を与えたいと思っているあなた、一度神楽坂のA−colorを訪れてみたらいかが。

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