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VMDインストラクター 鷹取 美加さんを取材しました2018年3月

G-SHOCKの店頭ブランド戦略

VMDインストラクター 鷹取 美加さん

鷹取 美加さん

カシオ計算機株式会社

戦略統轄部 時計戦略部

プロモーション室

35周年を迎えるG-SHOCK

 G-SHOCKという時計はカシオ計算機の腕時計ブランドだが、今年誕生35周年を迎えるという。「電卓四兄弟」という本で知った。この本は、カシオ計算機(株)の創業者である樫尾4兄弟について書かれたものである。

 それによるとG-SHOCKは誕生後、日本ではなかなか売れなかったが、アメリカで人気に火がついて、その後日本でヒットしたらしい。

 意外な事実でこの時計に興味のわいた私は、カシオ計算機のG-SHOCK売場担当部署にこのブランドが今どうなっているかを取材した。もちろん、私はVMDの専門家なので店舗や売場中心に話を聞くのだが、「計算機」という名の付く会社が、セイコーやシチズンという時計専業メーカーと共に、時計ブランドの雄になった経緯も聞いてみることにした。

G-SHOCKはアメリカから広がった

 「カシオの時計は時計であると同時に、精密電子機器でもあるんです」

 開口一番に出た言葉がこれだった。同社戦略統轄部 時計戦略部 プロモーション室の鷹取美加さんの言葉だ。どういうことかというと、スイス時計が精密機械だとすれば、G-SHOCKはLSIでできている電子機器だという。もともとカシオは電卓などでLSI技術を培ってきた。時間は1秒1秒の足し算であるという発想からスタートした同社の時計事業は、そのLSI技術が大きな強みであるという。

 「時計に関して、セイコーやシチズンに比べて当社は超後発。だから、既存の時計という概念では勝てませんでした。生活者にベネフィット(付加価値)を与えるものでないといけなかったのです」

 G-SHOCKが誇る最大のベネフィットとは、ホッケー選手が氷上で思い切り打っても壊れないタフネスさ、そして主にストリート系に愛される武骨でソリッドなデザインだった。

 発売当初、日本では売れずに、アメリカで火が付いたG-SHOCK。平成になって、キアヌリーブスが映画「スピード」の中で付けていたG-SHOCKが話題になり、その後もスティングなどの有名人に愛され、人気を博していった。

 最初に支持した人々は、兵士や消防士という極限で活躍している職業人で、次第にスケボーやBMXといったストリート系の人たちに広まっていったという。このストーリーがG-SHOCKの世界観の原点になった。

G-SHOCKの世界観を表現する

 アメリカから逆輸入された形のG-SHOCKは、次第に知名度を上げていったが、当初扱ったのは家電量販店などの、もともとカシオ製品を扱っていた流通だった。当時、時計専門店はセイコー、シチズンの牙城で同社の入る余地はなかった。ところが人気が出るにつれ、顧客から「G-SHOCKはないか」と言われて置かざるを得なくなり、どんどんその牙城を崩していった。

 今や百貨店やセレクトショップ、高級時計専門店に至るまでG-SHOCKの売り場は拡大している。しかし、それが悩みになった。

 「実際、同じ商品が家電量販店にあったり、百貨店や時計専門店にあったりします。また、初期の愛好者が大人になってきたこともあり、品揃えと合わなくなってきました。顧客の年齢や志向に合わせた商品ラインアップと売場づくりをしなければいけなくなりました。そのために、私が所属している時計戦略部や宣伝部、そして営業と、部門を超えてタッグを組んで、売場のブランドづくりを推進しています」

 宣伝に関していえば、G-SHOCKは、他社のように大物タレントは起用しない。渋谷をG-SHOCKの映像とイベントでジャックし、MTBやサーフィン、スノボなどのスポーツのスポンサードをすることによって、ファンを育成している。それがプロモーションチームの仕事だが鷹取さんの役割としては、そのイメージがぶれないように売場をつくらなければいけない。

 例えば最近は、ストリート系ファッション誌はもちろん、モノ誌系への露出が増えて、機能や素材にこだわる大人も増えてきているという。そんなファンのために、ワンランク上の商品も置いていきたい。なので、時計を並べる什器はもちろん、直営店の場合は床や壁などの素材やデザインにもこだわり、施工会社と入念に打ち合わせを重ねている。売場づくりのノウハウであるVMDも15年前から取り入れて、ハードだけでなく、商品の量や置き方、空間の取り方、POPなどもガイドラインを定めてきた。

多岐にわたるG-SHOCK売場

 カシオは、そのようにして2013年頃から直営店や小売店の時計売場を見直してきた。G-SHOCKの特徴として、幅広い流通で展開されているということがあり、それぞれの流通に沿ったVMDが必要となるのだ。

  • G-SHOCK STORE

 直営店。現在6店舗。銀座東急プラザやお台場アクアシティなど商業施設に出店。

  • EDGE

 高級時計専門店のインショップ形態。スイス時計ブランドとも軒を並べる。BSET新宿本店など現在7店舗。

  • EDGE
  • 百貨店
  • 時計専門チェーン店
  • 大型量販店
  • GMS、ホームセンター

店頭の大型アルミオブジェ「G-SHOCK STOREは、「G-SHOCK(+BABY-Gの)ファンとブランド拡大と、ブランドステージ向上」を大きな役割としてブランドの世界観を表現する存在です」。この彼女の言葉を裏付けるように、G-SHOCK STOREとEDGEに関しては、G-SHOCKサインを来店客がわかりやすいように大きく設置し、またアルミの大型オブジェを店頭に大きく構えている。

 「百貨店で展開しているPREMIUM SHOPとCONCEPT SHOPという形態は、高価格帯中心にCASIOのウオッチ全体を拡大していく存在です」。PREMIUM SHOPに関しては、G-SHOCKではなくて、CASIOのロゴを大きくコーナーに設置するようになってきた。百貨店側がCASIOブランドを認め始めたためという。

「カシオは計算機のイメージから個性的な商品をつくる総合電子メーカーに変わった。グローバル企業にもなったし、お客様に与えるイメージは他の時計ブランドとそん色ない」こう百貨店のフロア担当から言われたという。現在、高島屋や大丸の時計フロアには、SEIKO、CITIZEN、CASIOと大きなサインが続いている。確かに、CASIOのブランド力は上がっているのだ。

VMDを見直す

 G-SHOCKの店頭VMDは主にショップデザインとディスプレイに分けられ、その両方を見直していった。(VMDとは売場つくりのノウハウのこと。ビジュアル・マーチャンダイジングという)

 ショップデザインとは、床・壁・天井・什器という要素でつくられたハコのデザインのこと。ディスプレイとは、ハコに入れる商品の展示と陳列のことだ。

リニューアルしたG-SHOCK STOREアクアシティ台場 まず行ったのが、G-SHOCK STOREアクアシティ台場リニューアルにおける、施工会社2社によるコンペ。1社の案はとても斬新で評価は高かったが、「店の使い勝手」からかけ離れていた。デザインはいいが店舗スタッフが動きにくく、お客様に対応しにくい店舗に見えた。その結果、今のデザインになった。

 同店の店頭には、前述した、大きなアルミのオブジェがある。これは造形作家が原型を作り、鋳物工場で製作、最後は職人が手作業で磨き上げたもの。

 「G-SHOCKは日本のものづくりの叡智です。日本のものづくりの象徴ともいうべきものを店頭にイメージしています」と鷹取さんは言う。

「また、G-SHOCK STORE1号店はここでしたが、オープン当時は「セレクトショップスタイル」でした。メインはG-SHOCKとBABY-G(Gブランド)ですが、EDIFICEやSHEENなどの他ブランドも扱っていました。オープンから11年たった2014年5月に、G-SHOCKとBABY-Gを大きく打ち出すデザインスタイルに改装しました。現在はGブランドのみを扱っています」

G-SHOCK STORE福岡 写真はセレクトショップタイプの店。G-SHOCK STORE福岡だ。Gブランドだけでなく、OCEANUS、PRO TREK、EDIFICE、SHEENなどの各ブランドを並列に展開している。性別・年齢別問わず誰でも選べる時計セレクトショップというわけだ。

 今度は、昨年12月のリニューアルしたG-SHOCK STORE仙台の写真を見てみよう。これはG-SHOCKを全面に出している店だ。

リニューアルしたG-SHOCK STORE仙台 これまでの仙台店は、G-SHOCKはメインだが、他の時計ブランドも並列に立てており、壁面や什器にも大きくブランドサインを掲げていた。それを見直して、G-SHOCKの世界観をハコ全体に打ち出し、よりイメージを強くしたわけだ。

 G-SHOCKのイメージにあやかり、仙台店はセラミックタイルやALCコンクリート、木の素材を店内に浮き彫りにした。ガレージのシャッターに使うガリバリウム鋼板を壁面やウインドウのバックボードにした。

 品揃えをG-SHOCKとBABY-Gに一挙に絞り、G-SHOCKを強く打ち出すことで、世界観をより際立たせた。高価格帯商品も展開することにより、ハイクオリティな店になり客単価も上がる。リニューアル後はクリスマス商戦だったが、売上も好調だったという。

ディスプレイとマニュアル

 ハコの話はそれくらいにして、今度はディスプレイの話をしよう。ハコだけできても、肝心の商品の佇まいがなっていなければ、ブランド価値は大きく下がるのがVMDである。

 2000年以降、鷹取さんはVMDについての研修を各地で実施し、陳列のクオリティアップを図ってきた。(詳しくは、当誌バックナンバー2010年12月号を見てほしい。全国各地の営業所や時計店にVMD研修に奔走している彼女の姿をレポートした)

 その後、前出の販売チャネルごとにモックアップツールの見直しをし、時計を置くトレイ、台座、Cリング(時計を巻く展示台)、ロゴプレートの仕様を決めた。国内外でバラバラになっていたディスプレイ用品を一挙に見直したのだ。これは、卸や代理店、同社営業の協力を仰がないといけなかった。

チャネルごとのモックアップツール仕様書 そこで、国内に対しては写真のような仕様書をつくり、百貨店・有力専門店はこの仕様・・・と、販売チャネルごとに変化を持たせた。会議などで丁寧に説明し、ディスプレイの実演も披露した。このモックアップツールはほとんど当社のオリジナルで作りました。全国の売場の現状を細かく見直しながら、ディスプレイ制作会社と決めていきました。だいぶ時間がかかりました」

 これにプラスして、VMDマニュアルも2巻作った。ひとつは、「「わかりやすい」「見やすい」「選びやすい」展示と陳列の基本」、もうひとつは「ブランドショップ 店頭構築ガイド」だ。単にツールの仕様を決めるだけでなく、これらをどのように使い、どのようなディスプレイにしたら、お客様にとってよい売場になるかを教えている。イラストや写真をふんだんに使っていてわかりやすい。すべて彼女の手作りだ。VMDの学校「売場塾」に通って訓練した成果が現れていた。

ディスプレイ構成を解説しているページ(ブランドショップ構築ガイド)商品群の中で特定の商品を目立たせるやり方・ディスプレイ構成を解説しているページ(ブランドショップ構築ガイド)

・商品群の中で特定の商品を目立たせるやり方

 これには続きがあり、昨年11月から社内の営業向けWeb資料で「売場づくりのワンポイント」を月刊でリリースしている。1回5、6ページでプリントアウトもできる。特に若い営業担当に好評だという。

Web版「売場づくりのワンポイント」とそれを解説している鷹取さん・Web版「売場づくりのワンポイント」とそれを解説している鷹取さん

 また、彼女はモックアップツールだけでなく、プロップスの選定にも気を使っている。プロップスというのは装飾品のことで、写真@のようなスケボー、キャップ、ヘッドフォンなどを指す。

プロップスを使用しているディスプレイ@プロップスを使用しているディスプレイA 大事なのは、プロップスの持つ質感だ。写真Aを見てほしい。時計の下にアルミのパンチボードがひしゃげて敷かれている。このメタリックな質感が、商品にハリと硬さを与えているのだ。「直営店であるG-SHOCK STOREは、商品を購入する場所であると同時に、ブランドを楽しんでもらう場所と心得ています。プロップスなどを用いてディスプレイでもお客様に楽しんで頂きたい。だから、プロップスひとつひとつもブランドの世界観に合ったものを選んでいます。雑貨屋を半日探し回ることもあります (笑)」

海外店舗へも波及

 実は、G-SHOCKの時計の売上は、国内が3割で海外が7割と、圧倒的に海外が多い。

 全世界の主要都市に同社の拠点はあり、それぞれの国の販社と代理店とが協力してG-SHOCKの専売店を展開しているのだが、当初は国内と同様、店構えも展示もバラバラだった。彼女は国内をメインに担当しているが、自ら海外店舗のサポートに行くこともある。

「パースや写真を送ってイメージを伝えても、細部まできちんと伝わっていなかったため、仕様が違うお店ができたこともありました。ロゴの使い方もいろいろで、メーカーロゴと店舗ロゴ、どちらが優先になっているのかわからないショップもありました。

「G-SHOCK CASIO STOREデザインマニュアル」。壁面の仕様を解説しているページ床や壁の素材を解説しているページ そこで考えたのは、図面まで作成して現地へ送ること。内装の素材やサイズも「この通りにやって」と全て指定します。これなら狂いのない店舗ができるはず、と考えました」

そして制作されたのが「G-SHOCK CASIO STOREデザインマニュアル」だ。

 さらに、前述した国内のVMDマニュアルも英語に起こして、海外推進部へ展開した。ネイティブのサポートを受けつつ、自ら英会話学校に通ってチェックし、資料を作成する日々が続いた。

ウエスティンホテルでのモックアップ店舗・ウエスティンホテルでのモックアップ店舗

 極めつけは、海外の代理店向けの会議だ。昨年、東京恵比寿のウエスティンホテルで実際の海外店モデルをつくって関係者に見せた。図面とVMDマニュアル、そして現物があって、完ぺきに近いブランドコントロールだ

 今春から世界各地でこの店舗を広めていくという。今後のグローバル展開が楽しみである。

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