POP文体がブランドの個性をつくる



POPの文体について話ししますが、星のやが格好の材料になります。

まず、テラスBARのPOPを見てみましょう。

「夕日に沈んだ軽井沢の夜、テラスで過ごしてみてはいかがでしょうか。
お供にハーブティーとウイスキーを用意しました。
温かなハーブティーカクテルを片手に、涼しい夜風をお楽しみください。」

星野や軽井沢に滞在中、夕方部屋に戻ると、さりげなくこんなPOP(しおり)が、リビングに置いてありました。
その近くには、シーバスリーガル12年物とハーブが。

面白いのは、しおりの文体でした。
「夕日に沈んだ軽井沢の夜、テラスで過ごしてみてはいかがでしょうか」
なんだか洒落ています。
おせっかいだよ!!と言いたくなるような文章ですが、それでいいんです。
実に星のやらしい。
(実際飲みませんでした・・・)

次はこれを見てみましょう。
部屋の防虫スプレーの脇にあるPOPなんですが、こう書かれています。

「自然豊かな谷の集落では、四季を通じて様々な虫たちが暮らしています。
その環境ゆえに、時折彼らも客室にお邪魔してしまう場合がございます。
長時間の扉、網戸の解放にはお気をつけください。
万が一お部屋でお見かけの際には、集落の虫を知り尽くしたスタッフが伺いますので、フロント【7番】までご連絡をお願いいたします。」

これも、粋な文体。
ベランダにオオミズアオが飛んできていたので、その虫博士に蛾のこと伺ってみたかったです。
なんだか、キンチョールで虫を殺す前に、うんちくを聞きたい気持ちです。
(もちろんオオミズアオは殺しませんでした)

さて、

  • 売店のPOP
  • 部屋の案内ファイル
  • レストランのメニュー
  • 星のや軽井沢の中のPOPの文体はどこも上記のような感じです。

    文体がエッセーみたいな感じなので、カジュアルに読めて心が和みます。
    たかが防虫スプレーの案内書きでも、それに添えられているPOPにぬくもりがあります。

    普通のキャンプ場では、キンチョールが置いてあって、そこに「虫刺されにご注意ください」みたいなPOPが、赤字で貼り付いているだけでしょう。
    でもここのPOPは、アイデンティティがあるので、なるほど星のやだ、という感慨を受けます。

    売場塾のPOP指導講座では、書体の他に文体や言い回しのことも講義していますが、文体とは、まさにお店やブランドのアイデンティティから来るもの。
    その人となり、そのブランドとなりが表現されていなくてはいけません。

    私が好きな文体は、MUJIや中川政七商店のPOP。
    ここのPOPコピーは単なる機能説明に終わっていないんです。
    です・ます調であり、形容詞が豊富。感情的なんです。

    まあ、なんといっても人気のある表現は、ヴィレッジヴァンガードのPOPでしょう。
    あの人を食ったような書き方は、ヴィレヴァン独自の文化というか社風にもなっています。
    商業界で読んだのですが、サリンジャー「ライ麦畑で捕まえて」という本のPOPは、「ジョンレノンを殺った男の必読書でした」という衝撃的な文句があったそうです!!
    うーん、これは読んでみたい・・・となるかもしれません。

    ちなみに私は、文体で好きなのは、週刊アエラの「現代の肖像」で、これは十何年も毎週読んでいました。
    「現代の肖像」は同誌のシリーズで、毎回取材先と筆者が違います。
    ただしアエラ編集者は毎回うまく文体をコントロールして、いつも言い回しはいっしょなんです。
    このシリーズは、現代のがんばっている人を取材するドキュメンタリールポなのですが、その文体から取材された方の、生きるのに一生懸命な息遣いが聞こえてくるんです。
    人の生き様を読むのが好きなので、いつもこれを読んでは感動しています。

    実はこれに影響されすぎて、私の「VMDインストラクターのお仕事取材」の書き方も「現代の肖像」風になっています。(笑)

    ●VMDインストラクターのお仕事取材

    ともあれ、POPはお店やブランドの個性を表すもの。
    VMD担当の皆さん、POP文体や言い回し、研究してみましょう。

    (vmd-i協会事務局)