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売場塾生1000名に

売場塾生1000人記念アーカイブ

1.地下室から始まった売場塾

売場塾の生徒もこの秋で1,000人になりました。
今回は、アーカイブ売場塾ネタで行きたいと思います。

売場塾はいつからどこでやっているのか?
それは2006年4月春期からです。
そして場所は東京三田なのですが地下室から始まったということ。

オーバルリンクは2005年、新橋汐留オフィスから田町駅下車の三田オフィスに移転しました。
マンションの一室で売場塾を始めたのですが、このマンションのいいところは地下に会議室があるということでした。

当時の売場塾第5期の写真がこれ。

8人掛けのテーブルとスクリーンがある地下室。
なんかいいですね。地下室の怪しい雰囲気好きです。
当時、受講生に「虎の穴へようこそ」と言っていました。(^^)

この地下室、ラックと展示用テーブルがあってよかったです。
ディスプレイ見本台にもできるし、IPのワークショップにも最適。
みんなイキイキディスプレイをつくってくれました。

2.手狭になったので近くのビルに移転

その後、受講者がだんだん増えていき、翌2007年の夏は地下室を出て近くのビルで行うようになりました。
これはチームでディスプレイをつくっている様子。

教室もひろび~ろになりました。

ただ、テキストはパワポでつくっていて製本はまだしておらず、下写真のような感じでした。
枚数は多いのですが、ページナンバーも印字していなかったです。
売場塾のロゴも変わっていなかったです。

初めて製本したのは、2009年春から。
とはいえ、まだパワポのページでした。

2010年夏、インデザインでテキスト刷新。
パワポのイラストはすべてCGで立体的に。
お客様の視線で見た売場を忠実に再現。
ほとんどのCGは高さ155cmの視線で見たものになっています。

教材も徐々にオリジナルなものに変身。
最初はスーパーや100円ショップで買っていましたが、売場塾オリジナルデザインに。
これはオーバルビールです。(^^)

3.「移動売場塾」開始

「大阪でもやってほしい」という声が上がりだしのが2009年。
その夏から大阪売場塾を行うようになりました。

売場塾移動キットを開発。
ディスプレイ教材はすべて3梱包のキットで運搬できるように、通常の売場塾とは別に専用キットを作りました。(下写真)

大阪は3日間通しの合宿形式にしていたので、大阪の方というよりも全国から泊りで来られる方が多かったです。
大阪の方はほとんどいなくて北海道や九州からの方が多いときもありました。

そのうちに「当社で売場塾を開催してほしい。VMDチーム全員に資格取ってもらう」という声が多くなり、出張売場塾を開催することになりました。
オーダーメイド売場塾の始まりです。2013年9月のことでした。

オーダーメイド売場塾のいいところは、業種・業態・取扱商品にカスタマイズできることです。
文字通り、企業の本社に行って行うので、受講生の手間は省けますし、その会社の商品で授業ができます。

現在、VMDインストラクターのうち、売場塾を会社の指定校としているのは約半数。
多くのブランドが売場塾をVMD指定校としているんです。

4.日本橋に専用教室

時は2018年になりました。
それまで貸会議室を借りていたのですが、本格的に常設校をつくろう、ということで日本橋に専用教室をつくりました。
日本橋校の始まりです。

常設の売場塾ということで、企業研修やオーダーメイド売場塾もここでやるようになりました。
日本橋の商業施設もすぐ近くなのでフィールドワークもやりやすかったです。
ちょうど三越日本橋店がリニューアル、高島屋が新店舗、コレド室町がオープンなどと話題が目白押しの日本橋。
タイミングよかったです。

5.オンライン売場塾の始まり

と思ったのもつかの間、1年後コロナ禍が訪れました。
2020年4月は、授業閉鎖。しばらく無人になりました。

その時の思い出で、今となってはおもしろいエピソードがあります。
2020年新春講座大手にマスクメーカーの方が受講されていました。

当時は横浜のクルーザーのコロナ感染が問題になっていたころ。
マスクメーカーの方が気を利かせてマスクを持ってきてくれました。
その時はまだ2月でした。

2020年新春講座の受講生が次第にマスクを付け出します。
「時期に収まるだろう」とみんな思っていました。

3月にマスクが不足しだしました。
マスクメーカーの受講生は「いや、ものすごく大変です」といっていました。
そう、コロナ禍はマスクメーカーの方でも予測できなかったんです。

2020年11月にはオンライン売場塾を始めました。
北千住オフィスの一角をつぶしてオンライン売場塾専用スタジオにしたんです。(上写真)

器用な社員のおかげで、オンライン用キットを開発、アパレル以外はすべてオンラインとリアルの兼用に。

昨年までの売場塾受講者はオンラインとリアルが半々位。
コロナが開けた今でも需要があり、オンライン売場塾は12期になっています。

6.銀座に移転

そして今年から売場塾は銀座に移転。
外国人観光客でにぎわう街をフィールドワークの舞台にしています。

会場は松屋の裏にある東京都中小企業会館。
昭和レトロなクラシックビル。
ゴジラマイナス1.0の対策本部みたいですごくいいです。

玄関に塩澤達三先生の像があります。(誰?

7.売場塾の数字

2006年に始まった売場塾。
ただいま18年目になりました。

地下室から始まった売場塾が、ここまで来れたのは皆様のおかげと深く感謝しています。
1000名の受講生の皆さん、ありがとうございます。

ここで数字を振り返りたいと思います。


●資格取得者数
VMDインストラクター 915名
シニアVMDインストラクター 22名

●テキスト改訂数
VMD基本講座 62版
アパレル基本講座 37版
VMD教育指導講座 43版
ディスプレイ指導講座 12版
POP指導講座 24版

●欠席率 1.5%

●開催数
リアル 91期
オンライン 12期

●最南端受講生 沖縄
●最北端受講生 北海道
●海外受講生 中国、韓国、ロシア

●論文数 71

8.事業の続け方

ということで、VMDの会社を21年続けていて山あり谷ありだったんですが、事業を続けていく秘訣を語りたいと思います。
よかったら、下記のブログご覧ください。

●事業を続けていく秘訣

今後とも売場塾並びにVMDインストラクター協会をよろしくお願いします。(^^)

(vmd-i協会事務局)

月刊VMDムック

月刊VMDブログ「売場づくりの知恵広場」が本になりました

1.書籍概要

●タイトル/ディスプレイが深く学べる12か月「商空間ディスプレイ教本」
・株式会社オーバルリンク 代表取締役 深沢泰秀
・定価: 2,500円(税別・送料別)
・サイズ: A4版
・体裁: 77ページ・フルカラー
・出版社: 株式会社オーバルリンク

●詳細・購入はこちら
→製本版はこちら
→キンドル版はこちら

この本は、月刊VMDムックとして販売開始しました。
この本のキャッチは、「ディスプレイが深く学べる12カ月」
毎月コツコツ実践してディスプレイのセンスを磨く本です。
研修用テキストとして、VMD担当や販売スタッフの勉強本として活用できます。
購入は1冊からOKです。

2.当ブログが書籍に昇華した理由

VMDの本

「売場づくりの知恵広場」はかれこれ18年書いてきました。
古い「売場づくりの知恵広場」はライブドアさんにて2016年まで書いていました。

2017年に始まった新しいこのブログサイトは、ふんだんに写真やチャートを足り入れているのが特徴。
アメリカの店舗視察の写真もたくさん取り入れています。
ブログを書くきっかけは売場塾の授業で話したりなかったうっぷんを放出することでした。(笑)
文章にすることによって、VMD理論を整理し、売場づくりのノウハウやハウツーを明快な言葉として開発することに力を注いできました。
ディスプレイ制作の細かいテクニックも多数生み出しました。

その代表的な新テクニックをワークショップ形式で一昨年から毎月披露することにしたのが、センスアップセミナーです。

●オンライン「センスアップセミナー」

このセミナーは、毎月テーマを変えて12か月で完結するようになっています。

1月 VMDとは
2月 VP,PP,IP
3月 ディスプレイ構成1
4月 ディスプレイ構成2
5月 ディスプレイ構成3
6月 ディスプレイ構成4
7月 ライザー
8月 プロップス活用体系
9月 陳列
10月 展示
11月 カラー
12月 POP活用体系

この月例セミナーのテキスト本として活用しているのが月刊VMDという、ブログをテキスト化した雑誌です。
つまり、「商空間ディスプレイ教本」は、1月~12月分の月刊VMD原稿をひとつにまとめ、加筆修正して初心者にもわかりやすくし、アメリカ視察のコラムも設けて本にした、というものです。

ディスプレイのレッスン本としてわかりやすく、ディスプレイ研修やVMD研修のテキストとして使用できます。
売場塾の生徒にも副読本としておススメしています。
売場塾のレクチャーで言い足りないことをブログにし、テキストにしたのがこれなので、正真正銘の副読本!ですね。

3.研修会社のテキストやスタッフの勉強本としても利用可能

ディスプレイの本

皆さんがVMDの講師だったら、ぜひこの本を研修テキストとして利用下さい。
購入部数により割引サービスがあります。
いろいろな売場の写真やチャート図が毎ページ入っているので、すべての業種・業態・取扱商品のお店に適合します。
販売スタッフ研修や店長研修にうってつけです。

100冊以上購入の場合は、広告枠をいれることができるので、自社の宣伝や従業員のベルティとしても使えます。
30冊から段階的に割引価格が適用されます。
詳しい料金・広告サイズは、資料請求をしてください。

●「商空間ディスプレイ教本」資料請求

4.注意 ブログの中身すべては書籍化していません

最後に注意です。
このブログが元となってできた本と言いましたが、ブログすべてを網羅しているわけではありませんので、ご注意ください。
前述のごとく、ブログを一部抜粋し加筆修正した本となっています。

それでは皆さん、月刊VMDムック「商空間ディスプレイ教本」と当ブログをよろしくお願いします。

(vmd-i協会事務局)

ギンザシックスのディスプレイ

ディスプレイをふわっと浮かせる2つのテクニック

1.ワフティングとフローティングとは

今回はワフティングとフローティングについてお話しします。

どちらもディスプレイ制作のテクニックです。
ワフティングは、ふわっと商品を持ち上げること。
フローティングは、ふわっと商品を宙に浮かせること。

英語に直すと下記です。

waft = 漂わせる ふわりと運ぶ
float = 浮かべる 浮かせる

どちらも似ています。
どちらも、重たい商品をフワリとさせることを言います。

では、二つの違いはなんでしょう?
それはライザーが見えるか見えないかの違いです。

ライザーとは、展示台のことです。
ライザー忘れた方は、こちらを見てください。
●ライザーの使い方

それでは実際にどんなディスプレイか見てみましょう。
ワフティングとフローティングを使って、テーブルディスプレイをそれぞれ作ってみました。
インスタグラムでお馴染み、カフェテーブルです。(^^)

●商空間スタイリスト インスタグラム

テーブルカフェ
テーブルカフェ2

上の二つの写真を見てください。
上がワフティング。
下がフローティング。

もう少し、近づいて見てみましょう。

ワフティング
フローティング

上の二つの写真を見てください。
上がワフティング。
下がフローティング。

二つのディスプレイテクの違い、わかりましたでしょうか。
どちらも商品をふわっと浮かせています。

両者の違いを種明かしをしましょう。

ライザーの様子
ライザーの様子

上の二つの写真を見てください。
上がワフティング。
下がフローティング。

わかりますか。
ワフティングは、商品を足で支えています。
フローティングも、商品を足で支えています。

足とはライザーのことです。

「なーんだ、ワフティングもフローティングもライザーを足ゲタにして商品を注に浮かせている、同じじゃん」と思うかもしれません。
確かにその点では同じなんです。

大きな違いは、足が見えるか、見えないか。
そこだけです。

足が見えると、「おー、商品を空中に上げているなあ」というのがわかります。
足が見えないと、「あれ、なんでこの商品浮いているんだろう?」と不思議になります。

つまり、フローティングの方がワフティングよりもオドロキが大きいんです。
デパートや駅ビルに行くと、大きなオブジェが空中をふわふわと浮いていますよね。
下の写真を見てください。

東京駅

おー、あんなでっかいねぶたが浮いている~!!と来店客は感動します。

これが、床に置かれた状態だとあまり目が行きません。
床には他のディスプレイや什器、柱、店舗スタッフその他大勢でごちゃごちゃしているからです。

空中は、他に遮るものがなくノイズも少ないので、まるで飛行機を見上げる様。
地上のものよりも、注目率は高まります。
地上のディスプレイが3次元なら、こちらは4次元のディスプレイなんです。

論より証拠。
お菓子のディスプレイを浮かしてみましょう。

お菓子箱を使ったフローティング1

これが3次元の普通のディスプレイ。

お菓子箱を使ったフローティング2

これがフローティング。
あれれ、浮いているー!!と驚いたと思います。

改めて見比べましょう。
下の写真を見てください。
左が普通のディスプレイ。
右がフローティング。

お菓子箱を使ったフローティング3

これ、黄色いルックチョコを後でライザーが支えているだけなんです。
でも、ライザーは見えないですよね。
だから不思議に見えるんです。

2.ワフティングの実際

ワフティング

今度は実用編。
上の写真はアラモアナのショーウインドウ。
ミラーボールがライザー代わりになり、靴をワフティングしています。
キラキラボールがふわっと靴を持ち上げていて、靴に注目が集まります。

シュガーフィナ店内

上の写真はシュガーフィナのテーブルディスプレイ。
赤と金色のクリスマスチョコがワフティングされています。
ワフティング、お菓子のディスプレイにとてもいいです。

3.フローティングの実際

あなたが文具店にクルトガを買いに行ったとします。
シャープペン売場に行きますよね。

売場を見ると、ユニのシャープ芯のディスプレイが。

UNIのディスプレイ
シャー不便の芯のディスプレイ

近くに行くと、「あれれ、浮いている!!」
と覗き込むようになりませんか?
これ、フローティング効果なんです。

PPとしてユニのショーケースがあるけれど、思わず見入ってしまいます。
それはシャープ芯が浮いて見えるからなんです。

ライザーは何てことない、にょっきっと後ろから出ている棒なんですが、透明プラスチックで出来ている上に背景がメタリックなので、客は棒に気が付かないんです。

これがフローティング効果です。

4.ワフティング・フローティングに有効な商品

ワフティングとフローティングは、下記の効果があるのがわかったと思います。

  • 商品を高く持ち上げ、遠くから目立たせる
  • ふわっとした軽さを表現できる
  • ディスプレイのフォーカルポイントになる
  • 動いているような躍動感ができる
  • 商品のくくりをわかりやすくできる

このようなディスプレイに向いている商品は下記です。

●お菓子
・ギフト箱をふわっと持ち上げて、陳列に動きをつける
・マカロンやシュークリームをふわっと浮かせて軽快感を与える
・皿を浮かせてそこに商品を陳列すれば、皿がくくりとなる
したがって、商品分類がわかりやすくなる

●スポーツ用品
・靴や帽子を浮かせることで躍動感が出る
・サングラスやバッグを浮かせることでカジュアル感が出る
・板を浮かせてそこに靴を展開すれば、板がくくりとなる
したがって、商品分類がわかりやすくなる
・釣り用ルアーやビーチバレーボールなどボールを浮かせることで、動きが出る

●パーティ用品
・クラッカーや風船を浮かせることで、華やぎが出る
・オブジェであるシャンパンボトルやグラスを浮かせることで躍動感が出る
・ランチョンマットを浮かせてそこにつまみを載せれば、メニュー提案になる

●ジュエリー・腕時計
・指輪や腕時計を浮かせることで、一点豪華なフォーカルポイントになる
・スポーツウォッチを上下に浮かせることで、躍動感が出る
・ステージを浮かせてそこに商品を展開すれば、ステージがくくりとなる
したがって、商品分類がわかりやすくなる

なお、フォーカルポイントの用語忘れた方は下記ご覧ください。
●フォーカルポイントとは

上記以外にもいろいろな商品が使えます。
ぜひ、ワフティング・フローティングを使って、来店客にオドロキを与えてください。

なお、毎月開催のセンスアップセミナーでは、上記を始めいろいろなディスプレイテクニックを教えています。
興味ある方は、ぜひお越しください。お待ちしております。(^^)

●センスアップセミナー


(VMDインストラクター協会事務局)

アパレルのPPとIP

VP,PP,IPとは

1.VP,PP,IPとは

VP,PP,IPとは、ディスプレイの種類のことです。
ディスプレイの種類は3つあり、種類ごとにタイプ・場所・役割・構成が違います

それぞれ、下記の様に要約します。

●VP(ビジュアル・プレゼンテーション)
タイプ/ 展示
場 所/ 店舗の入り口、ゾーンの入り口、インショップの入り口
役 割/ 通行人もしくは来店客に、店や商品に関心を持たせ、立ち止まらせる。
構 成/ タイト、トライアングル、リピテーション、シンメトリー他

●PP(ポイント・プレゼンテーション)
タイプ/ 展示
場 所/ 商品グループの売場上部、売場手前、売場横
役 割/ 店内を歩いている来店客に、商品に関心を持たせ、引き寄せる。
構 成/ タイト、トライアングル、リピテーション、シンメトリー他

●IP(アイテム・プレゼンテーション)
タイプ/ 陳列
場 所/ 什器の中・上、テーブルの上、冷蔵庫・車など大きな商品は床に直置き
役 割/ 店内にいる来店客に、商品を選択・購入させる
構 成/ 等間隔、タイト、リピート、シンメトリー他

次にVP,PP,IPについて個別に述べるとしましょう。

2.VPについて

一番わかりやすいのが、ショーウインドウです。
すなわち百貨店やアパレルショップのウインドウがVPとなります。

通行人の目を留め立ち止まらせるのに有効な手段と言えるのがこのVPです。
若い女性がウインドウのウエディングドレスに見入ったり、子供が楽器店のトランペットを凝視したりするシーンをイメージできると思います。

VPは、ウインドウでなくてもOKです。
路面店よりもショッピングモールやGMSにテナントとして入居している店は、そもそもドアがなくウインドウもありません。
なので、店頭の展示台にマネキンを置いてVPにしている店はたくさんあります。(下記写真)

アパレルテナントのVP

VPのディスプレイは、店内で販売している商品を展示するのが最低条件です。
なので、単なる花のブーケやクリスマスツリーを置いてもそれはVPになりません。
販売する商品を置かないとVPの意はありません。
また、店内商品をただ置くだけではなく、テーマ性を持って展示するのが原則です。

テーマとは、「お客様が感じること」を言います。
Tシャツ3枚とGパンを置けばよい、というものではありません。
それを見ても、ただTシャツ3枚とGパンがあることがわかるだけです。

  • どこでどんなシーンで着るとよいのか?
  • どんな人が着ると様になるのか?
  • どんなテイストを醸し出してくれるのか?

など、客がVPを見ただけで服を着た情景が浮かぶようにしなければいけません。
例えば、ナチュラルなTシャツとショーパンのデニムをマネキンに着せて、リュックサックを掛けて駆け出すようなしぐさをマネキンに持たせます。
すると、アウトドアというテーマをお客様が感じるのです。

VPは通年計画としてローテーションするのが常で、1週間から1か月単位で変えていきます。商品は時間とともに変わるからです。
通常は、VPに店の打ち出し商品を出すケースが多いです。
アパレルショップなら、店側がその時強力に推し進めたい商品や色、素材、デザイン、シルエットをテーマ設定に基づいてVPとしてディスプレイすることになります。
基本的には、VPは店やゾーン全体を代表するディスプレイと捉えるとよいでしょう。

参考)
●テーマとは

3.PPについて

PPもVPと同じ展示の仲間ですが、VPよりも即興性の強いディスプレイと言えます。
店舗の代表的なディスプレイであるVPに対して、PPは売場の代表的なディスプレイであるため、カセットまたはコーナーと呼ばれる商品グループに連動して決めます。

こちらも展示のため、陳列棚と分けてディスプレイする必要があります。
商品見本展示の意味合いが濃いため、商品グループ直上に置いたり、突き出しテーブルの上に置いたりします。
服の場合はハンガーやマネキンを使うことが多いので分かりやすいと思います。
下記写真の什器上部、壁面上部にあるのがPPです。

PPもVPと同じくテーマ性が必要です。単純に什器の上に商品を一つ置いてもPPとは言えず、「在庫が置いてある」としか見えません。
VP程入念なプランは要りませんが、先ほどの審美性のセンスはほしいものです。
服だったらどんなテイストを発進するか、キッチン用品だったらどんな料理がつくれそうか、おもちゃだったらどんな子供向けにぴったりか、などのテーマを考えてつくります。

なお、PPについてはVPとあいまいな場合が多いので、あなたの店に合った定義が必要です。
それにつきましては下記参照ください。

●ディスプレイの定義をつくろう

4.IPについて

ドラッグストアやコンビニは、店舗デザインやオペレーションの都合上、VPやPPがない場合が多いのですが、最低IPはあります。
IPこそが、客が時間をかけずに

・商品を理解し
・ほしいものを選択でき
・掴んでかごに入れられる

便利なディスプレイです。
下記はスニーカーのIPです。

流通業界では「棚割りをする」という言い方がありますが、これは什器の棚に商品を置く位置決めをするということで、IPもこの働きをするものと考えてください。
ただし、IP=棚割りではありません。
フェイシングと言い、商品がよく映える置き方を考えたり、ハーモニゼーションと言ってリズミカルな並べ方をしたり、と棚割り以上のスキルが求められます。

このIP、難しいのは流動性があることです。
VPやPPはある程度の時間そのまま放っておけますが、IPは忙しい棚のため、欠品や補充が常です。
朝の始業時はきれいな棚だったのに、時間がたつにつれ、崩れていきます
お客様が商品を出し入れ、店側が商品を出し入れするからです。
現場のスタッフのメンテナンスが行き届いている棚はいつもきれいで、歯抜けがありません。
それは棚が乱れたらどのように対処するか、のIPコントロールのスキルが現場にあるからです。無印良品の棚がいつ行ってもはきれいなのは、現場教育がしっかりしているからでしょう。

また、客は商品をひとつひとつ眺めて店内を歩くわけではありません。
商品のカタマリである売場全体をサーッと眺めて歩きます。

売場という大きいくくりは商品で構成されていますが、IPが美しくないと売場全体のたたずまいは汚く見えます
商品を突っ込んただけの棚では、倉庫のようなたたずまいと化すだけです。
美しい売場のたたずまいは、それが壁であれ、島什器であれ、Gケースであれ、IPの総合力がモノを言います。
商品の量、色、置き方、並べ方など、什器1台~5台位を一つの売場単位としてIPを組み立て、たたずまいが美しく見えるようにしましょう。

VP,PP,IPをもっと勉強したいという方のために、毎月ディスプレイセミナーを行っています。
下記で日程とタイトルを確認ください。
●オンライン・センスアップセミナー

(VMDインストラクター協会事務局)

ホノルルクッキーカンパニーの店頭

白壁を直して来店客を増加させよう

1. オーケストレーションとは壁面の集合ディスプレイ

今回はオーケストレーションの話をしましょう。

オーケストレーションとは、壁面の集合ディスプレイのことです。
もともと「オーケストレーション」は、楽隊編成の意味です。
わがオーケストラは、どこにピアノを配置して、どこにバイオリンとクラリネットを配置するか・・・などなど楽隊の指揮者から見たポジションを決めることを言います。

同じように、店内の壁を構成する要素をどのように配置するかが、オーケストレーションという手法なんです。
オーケストレーションは、壁面の集合ディスプレイと言い換えてもけっこうです。
壁面ディスプレイの要素は下記です。

  • 壁そのもの
  • 商品陳列
  • 商品展示
  • POP
  • プロップス(装飾品のこと)

論より証拠。
オーケストレーションの実際を見てみましょう。

これはホノルルクッキーというお菓子店。
通りからお店を覗いた写真です。
店内右側の壁を見てください。
クッキーの箱がたくさん並んでいるのがわかりますよね。
詳しくはわからないけれど、なんか楽しそうなお店。
入ってみようかな~って気になりますよね。

実際に入ってみましょう。
上の写真はドアを開けたところ。
見事な壁面の集合ディスプレイが目に飛び込みます。
いろんなクッキーが壁一面にディスプレイされている~。
ウキウキしちゃう!!って感じになりますよね。

これがオーケストレーションの効果です。
壁面の集合ディスプレイって店頭を歩いている客を店内に引き込む作用があるんです。

ホノルルクッキーカンパニーはハワイのチェーン店です。
そのVMDの魅力はこちらで詳しく解説ています。
●店舗視察のコツ~お菓子店事例

2. どんな店がオーケストレーション効果があるのか?

今度はオーケストレーションが発揮されているいない店舗を見ましょう。
上の写真はセブンイレブン。
会社の帰りに撮影しました。
奥の壁が白くなっているのがわかります。

お店に近づいてみましょう。
奥の壁面に何もないのがわかりますね。
強いて言うと、POPがちょこっと貼ってあるくらい。
このお店の壁面什器は1.8mまであるけれど、そこから上は白なんです。

これはなぜでしょうか。
なぜ、先ほどクッキー店みたいに壁いっぱいにディスプレイしないのでしょうか?
それは二つの理由があるからです。

1つ目の理由として、コストがかかってしまう点です。
コンビニは、客がさっと入ってさっと出る店です。
その時生活に必要なものを売っているライフライン店舗なので、多くは目的買いです。
オーケストレーションの運用には、手間暇がかかります。
・ディスプレイをつくる時間とスキルなどの人件費
・ディスプレイ資材コストと、それを集めるコスト

これはコンビニの低コスト運営に逆行します。

ただでさえ、人がいなくて忙しいのに毎週毎週壁面ディスプレを考えたりつくっている暇はないということです。
オーケストレーションに手間暇かける位だったら、販売の自動化とかレジ周りの効率改善にコストかけたいというのがオーナーの気持ちでしょう。

2つ目の理由としては、コンビニは環境VMDとは縁がない店舗ということです。
環境VMDは別名エンバイロメンタルVMDといい、店内空間にブランドの世界観を与える手法で、菓子店や雑貨店、セレクトショップなどが好んで使っています。
MDはもとより、ショップデザインやMDP(ディスプレイ)を使って店内空間にブランドの世界観をつくりあげます。
例えば下記のような店です。

  • 無印良品
  • スリーコインズ
  • ユニクロ
  • フランフラン
  • アフタヌーンティー
  • ゴディバ
  • 212キッチンストア
  • ディズニーストア
  • ハンズ
  • ルルレモン etc

これらの店は、ただ商品を買う店ではなく、店内回遊してお気に入りの商品を探したり、買って生活を楽しいものにしたい商品が満載です。
コンビニのように間に合わせの商品を買うお店ではないのです。

そのような店は、店内のデザイン環境を気分よいものにしなければいけません。
ただの白い壁で四方を覆うようなお店にしたら、会議室で商品を買うようなさみしい気持ちになります。

スリーコインズを通りから見てみましょう。
壁がディスプレイで埋め尽くされていますよね。
なーんか、掘り出し物がありそうな予感!!ちょっと寄ってみよう。
という気になりませんか。

こんな感じで、気持ちをわくわくさせるようなライフスタイル店舗はオーケストレーションを用いて壁面で来店客を魅了させる仕掛けが必要なんです。

逆に、コンビニ、ドラッグストア、スーパーマーケット、ホームセンターのような「生活必需品」をメインとしたライフライン店舗は白壁でもいいかもしれません。

ただし、同じドラッグストアでもテイストを重んじる店は、白壁にデザインを施しています
例えば、アインズアンドトルペです。

写真を見てわかる通り、カテゴリーネームとイラストを施したオシャレなデザイン。
ファッション感度の高い丸井や西武のフロアにも出店しているほど、若い女性に人気のコスメのセレクトショップです。

3. オーケストレーションの3つの区分

オーケストレーションの構成要素は、大道具・小道具・商品です。
壁面を舞台と思ってください。

  • 大道具は、壁面のデザイン、そして什器
  • 小道具は、什器に載せるプロップスや販促物
  • 商品は、陳列や展示に使用する商材一式

ハワイのクイックシルバーの壁面を見てみましょう。
大道具部分は壁面のウッドフェンス。
そして天井のサーフボードのオブジェ。

小道具部分は、写真やポスターのフレームとサーフボード。
商品部分は、PP(商品展示のこと)としてのトルソ、そしてその下のTシャツとショーパンの陳列がそうです。

この3つの構成は、通常なら下記の様に担当が分かれているはすでず。

  • 大道具部分・・・店舗デザイナー
  • 小道具部分・・・デコレーター
  • 商品部分・・・・VMD

上はディズニーランド内のお土産ショップ。こちらも同様です。
壁面は3セクションに分かれていて、壁の上から言うと、下記になります。

  • 大道具部分・・・アーチ型壁面とキャラクターの造作物は店舗デザイン部署が担当。
  • 小道具部分・・・最上段のPPディスプレイ棚は、デコレーター担当。
  • 商品部分・・・その下の商品陳列は、VMD担当。陳列の研修をキャストにしている。

オーケストレーションはまさに部署間の共同作業といっていいでしょう。
無印良品がなぜ完璧までに全国のオーケストレーションを構築できるかは、部署間の共同作業によるルーティーンがなされているからです。

4. オーケストレーションのさまざまなタイプ

先ほど述べたように、大道具・小道具・商品という区分で担当者が分かれているのが、オーソドックスな体制ですが、例外はたくさんあります。

IP(商品部分)を壁面の下部基準とした場合、下記のタイプがあります。

  1. 壁面上部もIPタイプ
  2. 壁面上部はインテリアディスプレイタイプ
  3. 壁面上部は広告スペースタイプ
  4. 壁面上部は質感のある壁タイプ

写真を見ながら説明します。

1. 壁面上部もIPタイプ

これは、天井まで陳列がずっと続いているタイプ。
無印良品やラコステが普通に行っています。
無印良品は天井近くまで布団やレトルトカレーを陳列していますし、壁面を覆っているラコステのポロシャツ売場は色のグラデーションが効いています。
商品のボリューム感が出ている上に、色の帯がきれいなので、来店客はついつい壁面に注目してしまいます。
写真は、ラルフローレンのウオーターフォール。
色の配置はグラデではなくてチェッカー状にしてメリハリをつけています。

2.壁面上部はインテリアディスプレイタイプ

商品の世界観を象徴するオブジェやフレームなどをディスプレイするタイプ。
単純に造花や壺を展示している例(上の写真)もありますが、商品を絡ませて生活スタイルを表現したり、風景写真を掲示して生活のシーンなどを表現する方法などがあります。
下記はポスターを使用した、アパレルショップのインテリアディスプレイの例です。

ポスターは必ずしも商品と直接結びついてはいませんが、生活のシーンやテイストを売場に与えています。

3. 壁面上部は広告スペースタイプ

大きなPOPを壁面上に掲示して、遠くの客を引き付けるタイプです。
例えば、上の写真は年賀状の広告になっています。
これはプリントショップのオーケストレーション。
また、駅や空港の土産店のようにお菓子の広告を電照広告形式で掲示している例もあります。

メガネやスマホなど商品が小さい場合、最上段は広告スペースにした方がよいでしょう。
例えば、メガネを一つ二つ最上段にPPとしてディスプレイしてもほとんど遠目でわかりません
その場合メガネのフレームを大写しにしたブランド名入りのポスターを掲示した方がインパクトがあり、遠目でもわかります。

4. 壁面上部は質感のある壁タイプ

壁の質感を出すために、壁をそのままにしておくタイプです。
壁をわざと見せます。
単なる白壁ではなくて、テラコッタや板張りの壁は、壁そのものの質感(マテリアル)が来店客に伝わり、商品ブランドやショップブランドのテイストを助長させます。
例えば、上の写真は米国アンソロポロジー。ライススタイルショップです。
キッチン用品の売場ですが、凹凸のある土壁がボヘミアンなブランドテイストを助長させています。

5. 白壁を改善して入店客を増やす

私たちはお店のリバイスをするときに、「白壁」をどうやって魅力的にするか、よくプランします。
壁自体をディスプレイとみるオーケストレーションは、今話した方法で店の前を歩いているお客様を入店させることができるからです。

いままで数々の店舗にオーケストレーションを導入して、入店率や売上をアップさせてきました。
30%の入店率アップ、売上20%アップなど、具体的な数字結果をもたらした店舗は多いです。

オーケストレーションは、下記のセミナーで詳しくお話ししています。
●商品陳列の仕方

このセミナー、来年(2023年)になりますが4月と7月開催予定です。
白い壁面を直したいと思っている方、ぜひお越しください。

(VMDインストラクター協会事務局)