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陳列「ヨコからタテの法則」

商品陳列「ヨコからタテの法則」

1.商品陳列はヨコからタテの動きをもとに設計する

今回は、コンビニやスーパー、ホームセンターなどの一般消費費材をたくさん棚に陳列している量販店のVMDについて語ります。

スーパーマーケットは、図のように逆時計回り、つまり左回りに買い物客が歩いていきます。
矢印のようにお客様は歩いていきます。

お酒売り場に差し掛かりました。
あなたは6パック入りのビールを買おうとしています。
どのような棚割りだったら買いやすいですか。
AとBを比べてください。

そう、Aですよね。

なぜなら、Bだとアイテムが決まっているお客様は買いにくいからです。
6パック入りのビールを買おうとしているのに、5スパン(5つの什器)を横に歩いて探さなければいけないからです。

Aだと、横にスススーと歩いて行って、ビールスパンを見つけ、そこでメーカー銘柄をタテに探せばよいです。(下図)

買う優先順位がメーカー銘柄ではなくて、350mlというサイズでしたら下記の図の棚割りの方がお客様は選びやすくなります。(下図)

ともかく、例外を抜かして棚に何かを陳列する場合は、

●客はヨコに進みながら売場を探し
●立ち止まってタテに商品を探す

ということを思い描いてください。

写真を使って説明します。

例えば、上は外国コンビニのビール売場ですが、タテに銘柄別になっていて、横にサイズ別に展開しているのがわかりますか。

角の目立つところにバドワイザーやコロナビールがタテに陳列しているのがわかります。
で、上はサイズが大きい500ml、下の方は350mlが並んでいます。

これを見れば、お客様はビールの銘柄を探してヨコに歩いてバドワイザーにたどり着き、タテを見て上にある500mlの缶を掴んでかごに入れる、という動作になります。
つまり、メーカー銘柄が優先で次はサイズを探すということになり、先ほどのDの買い方に近くなるわけです。

こんな感じで、量販店の多くはタテからヨコのお客様の目の動きに合わせた棚割り設計になっています。

2.ゴールデンゾーンとは

余談ですが、量販店の棚割りには「ゴールデンゾーン」というものがあり、上図のように、お客様の目に留まりやすく商品を取りやすく戻しやすい棚を指します。
当然、ゴールデンゾーンにある商品は売れ行きがよくなります。

ゴールデンゾーンはメーカーが喉から手が出るほど欲しい棚です。
当然、上や下の棚に行くほどメーカーは不利になります。
理由はゴールデンゾーンでないとお客様の視界に入りにくいから。

お客様がヨコに歩くとき、いちいち1スパンごとに目を上下に動かさないからです。
ゴールデンゾーンをススーッと目で追ってヨコ移動しますので、メーカーとしてはやっぱりお客様の目の先に自社商品があってほしいのです。

3.例外はカセット方式

先ほど、タテからヨコの法則は例外があるといいました。
それはカセット方式を採用した売場の場合です。
Eの図を見てください。

ビール売場が2スパンに拡張されています。
そのビール売場において、各アイテム別のくくりはヨコになっています。

これ、なぜタテくくりにしないかというと、2スパン全体をお客様に見ていただくビール売場設計になっているからです。

カセットは服や雑貨売場でよく採用されている売場のつくり方です。
例えば、このキッチン用品の売場ですが、2スパンになっています。

マグカップやグラス、皿が陳列されていますが、2スパンの棚にそれらがヨコに並んでいるのがわかります。
これが2スパンのカセット方式です。
2スパンで売場全体を見てください、という売場なんです。

もしこの売場で、マグカップやグラス、皿がタテくくりになっていたら、とてもバランスが悪い売場になってしまいます。
カセット方式は、1カセット・1テーマになっていることが多いです。
テーマとはMDテーマのことで、先ほどの例だったら「ビール」、上写真では「食器」というMDテーマになります。

スパンは2から長くて5スパンに及びます。
前述の通りカセット方式の売場はアパレルや雑貨店で顕著です。
ユニクロや無印良品、ラルフローレン、アフタヌーンティーやフランフランなどで普通に見られます。

スーパーやコンビニでカセットにするということは、1テーマで売場を見せたい場合に多いです。
例えば、クラフトビールの特集を酒ゾーンにつくるとか、クリスマスギフトの特集をお菓子ゾーンでつくるとか、お客様を特別コーナーとして強力に誘客したい場合などに使います。

4.デパ地下菓子・惣菜フロアの場合

スーパー・コンビニではなくて、デパ地下の場合はどうでしょうか。
ヨコからタテの法則は通用するのでしょうか。

今はクリスマスシーズン。おいしそうなケーキやお菓子を探しにデパ地下にあなたは訪れているとします。

ここでもあなたは、ススーッとガラスケースの中のお菓子を見ながらヨコに進みます。
ショーケースは高さが1.2m位と低く、お客様は視線を落として「何かいいお菓子しないかな」とススーッとヨコに動いてお菓子を探します。

お菓子店は、A店、B店・・・とブランドごとに分かれていて店舗別にレジ清算するようになっています。
ただ、目を下方向に向けてヨコに移動していくので、店舗ごとにいちいち顔を上げて店名を確認することはしないし、ショーケースのデザインはどの店舗も似ているので、どの店のどのカステラか?なんてお客様は気にしません。

さて、ここで問題です。
A店、B店ともフィナンシェ、マドレーヌ、タルト、パウンドケーキを扱っていました。
各アイテムとも5個入、10個入、20個入などと個数が違う箱がGケース内に陳列されているとします。
FとGの棚割り、どちらがよいと思いますか。

Fでは、フィナンシェを買う人は1.5m幅のショーケースをヨコに見てどの箱入りを買うか選びます。
Gでは、フィナンシェを買う人は1.5m幅のショーケースをタテに見てどの箱入りを買うか選びます。

答えは~。

この場合は、どっちもアリというのが正しいです。
Fの場合は、棚がそのままアイテムくくりになり、棚1枚=アイテムという棚割りです。
視覚的にくくりはわかりやすいです。
ケースの中央に立てば、左右に目をやることでフィナンシェの箱どれかを選ぶことができます。

Gはタテに目をやってフィナンシェの箱のどれかを探すことになります。
Fよりも左右に目をやったり体を移動せずに済むので、こちらの方が使うエネルギーは少なくて済みそうです。

ただし、それほどFとGではお客様の労力は変わりません。

Gがよいとよるケースば、バレンタインやクリスマスの当日か催事フロアに出店している時でしょう。
ショーケースの前は常に人だかりになります。
その場合、お客様は各アイテムを一堂に見ることはできません。

ショーケースの左右がよく見えないので、どれを選ぶか一苦労します。
そんな時、Gの棚割りになっていれば、買うアイテムさえ決めていれば、人だかりでもタテに目をやって箱を選べばよいので、こちらの棚割りの方が有利なはずです。

ただ、Gの場合はくくりを明確にした方がよいです。
フィナンシェとマドレーヌ、タルトとパウンドケーキの間に隙間を入れて各アイテムのくくりを分かりやすくするのです。
くくりはアメーバにせずになるべく四角にしましょう。
その方がくくりは鮮明になります。

くくりに関し詳しくはこちらをご覧ください。

●陳列の整理整頓は get thigs square

5.リレーションの考え方

ところで、リレーションという言葉をご存じですか。
売場と売場のつながりのことです。

同じようなアイテム、同じようなMDテーマ、同じようなブランドなど、似ている商品を隣通しに置くことによってお客様の買い上げ率を上げるやり方をいいます。

例えば、図HのA店とB店の境に注目してください。
パウンドケーキが隣通しになっていますよね。
これがリレーションです。

●リレーションとは「売場と売場のつながり、商品と商品のつながり」

お客様はケースを見ながらススーッとヨコに歩いていくので、パウンドケーキが好きなら、パウンドケーキが固まっている方がありがたいのです。
お客様は店名を見ずにヨコに進むので、店が違っても違和感はありません。

あなたがデパ地下のお菓子店ならば左右の店舗、向かいの店舗が何を販売しているか観察しましょう。
向かいがチョコを売っていたならあなたのお店もチョコ(売っていれば)、右がクッキーを売っていたら、左側にクッキー売場を持って行きましょう。
リレーションがよくなり、買い上げ率は上がります。

また、リレーションは先ほどのお酒ゾーンにも適用できます。
上図を見てください。
焼酎→ウイスキー→カクテル→ビール→ワインというのもリレーションなんです。
焼酎、ウイスキー、カクテルは「水や炭酸をミックスして楽しめる飲み物」ということでリレーションがよいです。
カクテルはハイボールみたいなものもありますので、ウイスキーと相性いいですし、ビールもビアカクテルという飲み方があるので、カクテルと相性いいです。

リレーションは、ショーケースだけではなく壁面ラック、島ワゴンなど、あらゆる売場に適用できるフレームワークですので、ぜひご活用ください。

6.まとめ

スーパーにしても百貨店にしても、お客様はススーッとヨコに動いて商品を探し、目的の売場に着いたら今度はタテに目を動かして商品を探します。
これが「ヨコからタテの法則」です。

  1. 客はヨコに歩いて該当売場を探す。
  2. その時、ゴールデンゾーンである目の高さから腰の高さの棚を見る。
  3. メーカーはゴールデンゾーンを確保した方が売上は上がりやすい。
  4. 客は該当売場に着いたら、今度はタテに商品を探す。
  5. その場合、「くくり」で商品を探すので、ビール売場なら銘柄でくくるか、サイズでくくるか考えて陳列する。
  6. 銘柄を重視する客が多ければ、一番搾り、ドライなどとメーカー銘柄でくくる。
  7. サイズを重視する客が多ければ、350ml、500mlというサイズでくくる。
  8. リレーションを重視する。なるべく似たような商品、関連商品を隣同士に置く。

「ヨコからタテの法則」「くくり」「リレーション」などわかりましたでしょうか。
毎月恒例のオンラインセミナー「センスアップセミナー」では、これらの法則がさらに理解できます。
機会ありましたら、ぜひご参加下さい。

●センスアップセミナー「商品陳列」5月開催

(VMDインストラクター協会事務局)

スターバックス店舗

VMDをサービス店物販コーナーに生かして売上を上げる方法

0.サービス業のVMDとは

今回はサービス業のVMDについて論じたいと思います。
サービス業とは、下記のようなお店です。

  • カフェ
  • レストラン
  • ヘアサロン
  • 整体院
  • フィットネス
  • 歯科 etc

食事を提供する店もあるし、施術を提供する店などがあります。
病院もサービス業のひとつと考えます。

VMDは物販店だけの技術だと思われがちなんですが、サービスという無形商品を売っているお店にも応用が利くんです。
VMDは店内・院内の物販スペースの売上強化にとっても有効なんです。

事実、上記のお店のVMD担当がたくさん売場塾には来ていまして、そのノウハウを持ち帰って、物販の売上を伸ばしています。

まずはカフェの物販スペースの話をします。

1.スターバックスは物販が20%の売上

みんなが利用しているスターバックス。
スタバはカフェだけでなく、心地よい空間を提供しています。
「第三の場所」というコンセプトだけあって、いつもくつろげますよね。

そんなスタバの「売場」を見たことがありますか。
下記のような「コーナー」になっています。

スターバックスの物販コーナー

この物販コーナーの売上って、全店舗売上の20%あるんです。
つまり、お茶を飲みに来るだけではなくて、コーヒー豆やタンブラー、マグカップやドリッパーなどのモノを買う人もたくさん来ているんです。

スタバだけでなく、ドトールコーヒーやタリーズも物販コーナーがあって、それなりに売上を上げています。

詳しくはドトールコーヒーの売場塾生を取材した記事を読むとよくわかります。
●郡司由紀さんインタビュー

また、ヘアサロンではカウンターの近くに物販コーナーを設けてヘアケア用品を販売しています。
主にシャンプーやリンスなどですが、これらも店の売上に貢献しているんです。
例えばアヴェダというヘアケア用品メーカーの提携ヘアサロンでは、アヴェダ製品の売上がヘアサロン全体売上の30%ある店もあります。

アヴェダの物販スペース

コーヒーにしてもシャンプーにしても、普段使いの消耗品です。一度気に入っ商品だったら、毎回買い足すことになります。
スタバのコーヒー豆がおいしかったらそのまま買い続けるし、シャンプーやリンスが髪になじんで気に入ったら使い続けるでしょう。

同じように、整体院では枕やクッション、サプリメントやハーブティーを売っていますし、歯科では歯ブラシ、歯間ブラシ、歯磨き粉、デンタルリンスを売っています。
フィットネスジムでは、プロテイン、サポーター、ウエアやバッグなどを売っています。

これらの商品も、ヘアサロンと同じように継続して買う消耗品がメインなので、リピーターが獲得でき、店の売上拡大に貢献します。

 

2.VMDをどのようにサービス店舗は導入すればいいのか

売場塾のフレームワークを使って、あなたの店の物販スペースを高収益にしましょう。
下記のフレームワークが有効です。

●売場をつくる
・GPグランドプレゼンテーション
・什器レイアウト
・什器デザイン
・導線

●ディスプレイをつくる
・PPとIP
・AP

●POPをつくる
・POP編集
・POP制作

それでは3つの項目ごとにお話しします。

3.売場をつくる

「売場をつくる?すごく当たり前じゃん」とあなたは思うでしょう。
「バカにするな!」かもしれません。

しかしほとんどのサービス店・・・それがフィットネスであれヘアサロンであれ・・・売場があると来店客が気づくことは稀です。
こんな風に商品を置いていませんか?

  • 商品を店内の開いているところに分散して置く。
  • とりあえず会議室テーブルの上に置く。
  • 段ボールが積んである在庫置き場にラックを置き、そこに商品を並べる。
  • 待合室から見えない奥の奥にラックを置き、商品を並べる。
  • カウンターの空いているところに商品を山積みする。
  • 飾り棚にPOPもプライスカードも付けずに、造花といっしょに商品を置く。

これだとお客様はただ通り過ぎるか、「在庫置き場があるな」としか思えません。
つまり、売場だと思っていないんです。

それ以外でも、売場の立地の悪さも物販売上に影響します。
私の経験でお話しします。

ある歯科医では、歯ブラシなどの口腔ケア用品がガラスケースにて展示されていました。
しかし、入口の自動ドアの横にそれがあるため、見ようと思っても立ち止まることができません。
自動ドアは開いたままになってしまうからです。
客の出入りがあるため、そこでじっくり商品を見ることができません。

また、ある歯科医では、口腔ケアグッズが支払いカウンターの右にありました。
そのカウンターには二人、受付が立っていました。
20客ほどの待合椅子はそのカウンターの方向に向いています。
そんな状況下、椅子から立ち上がって売場に行き、待合客の目線を浴びながら商品を見る勇気ある人は誰もいませんでした。

試しに私がそれをやってみましたが、カウンターの女性も気になり、とても緊張しました。
とても買い物する気にならなかったです。

こんな問題は下記のフレームワークで解決します。

  • グランドプレゼンテーション
  • 什器レイアウト
  • 什器デザイン
  • 導線

グランドプレゼンテーションとは、「目立つようにコーナーのデザインを一体化させる」ことを言います。
ニトリでカラーボックスを買って待合スペースの空いたところに置くだけでは、やはり在庫置き場にしかなりません。

●グランドプレゼンテーションとは

売場だと一目でわかる目立つコーナーを作るには、待合スペースとカウンターの位置も含めてレイアウトし直す改善が求められます。
そもそもお店を作るときに、施工会社にすぐ丸投げせず、入口から客がどのように入ってカウンターに行き、待合い椅子に座るか、導線ストーリーをプランしなければいけなかったのです。

「いやもう無理。お店出来上がっているからカウンターは動かせない」
のでしたら、下記のように売場の什器レイアウトを施して下さい。

  • コーナー型 ・・・店内の入隅に什器をL字に置く。
  • アイランド型 ・・・テーブル什器を置き、テーブルをぐるり客が回れるようにする。
  • 柱型 ・・・柱を利用して棚をつくり、柱の上に商品展示を設置する。
  • 通り化型 ・・・受付に行く通路の左右に販売棚をつくる。
  • 什器デザインはすべて統一し、ありあわせのカラーボックスでデコボコにしないこと。
  • 待合客や受付の目線が直接届かないところをコーナーとして選ぶ。
  • 必要なら植栽や衝立で売場を半遮蔽する。

なども留意してください。

4.ディスプレイをつくる

これも「当たり前だろ!!」と、ヘアサロンのあなたは思うかもしれないんですがただ商品を置くだけではいけません。
今のままだと、商品が棚に置いてあっても売り物だと客は思わないんです。
単なる「インテリアディスプレイ」としか思わず、売っている商品だと気づきません。
こんな風になっていませんか。

  • 店主はバリ島の置物やアタ小物が好きなのでしょうか、そのディスプレイの中に売り物のシャンプーが混じっている。
  • 子供が学校の習字で花丸取れたので、それを美容室のウインドウにディスプレイする。その下にはヘアケア用品が置いてある。
  • カウンター後ろにシャンプーとリンスを等間隔で並べただけで、何のPOPもない。しかも、商品が小さすぎて商品ラベルも読めない。
  • カウンターの隅に商品を積んでおく。

このように商品を陳列している、展示しているとは思えない佇まいになっていませんか。
売場は「在庫置き場」と化しているんです。

ディスプレイはPPとIPという種類を知りましょう。
PPはポイントプレゼンテーションと言って、展示のこと。
IPはアイテムプレゼンテーションと言って、陳列のことです。

●VP,PP,IPとは

PPは、商品をそのまま棚に置くのではなく、下記のように置いてください。

  1. 展示台を用意
  2. 展示台に商品を載せる
  3. 展示台に商品説明POPを載せる、または展示台と一体化したPOPを作る

イメージ的には下記写真のような感じです。
このように、展示台・商品・POPが一体化した展示物をAPアーティクルプレゼンテーションと言います。

ビックカメラのディスプレイ

そのまま商品とPOPを置かずに、展示台を用意しPOPと一体化して商品を見せないといけません。

なぜなら口腔ケアもヘアケアもサプリメントも説明POPが必要です。
ただ商品を置いただけでは、商品の持つ効果・効能がわかりません。
しかし、POPを商品の横に置いただけだと、どのPOPがどの商品を指しているか分からなくなります。
また、展示物とわかるように置かないと、客は商品を持って行ってしまいます。
すると残ったのはPOPだけになってしまいます。

APの横に陳列商品をたくさん置くことによって、陳列と展示を視覚的に区別させるのです。
例えば、下の手帳を見てください。

ロルバルーンのディスプレイ

「旅するロルバーン」は展示台・POP・と商品が一体化されたAPになっているが分かります。
展示台の下に陳列商品があります。
展示と陳列が段差で明確になっているので、客は展示台の商品は取らずに下の陳列物の中から好きな手帳を取ってレジに行くことになります。

あなたの店で物販している商品も、このように展示と陳列を区別して置くと、お客様は買いやすくなるのです。

●APとは

5.POPをつくる

POPを置く。これも当たり前なんですが。(笑)
しかし前述のように、POPなしで商品を素置きにしているお店は多いです。

フィットネスにしても、ヘアサロンにしても、売るアイテムはドラッグストアやスポーツ用品店に置いてある商品とあまり変わりません。
それら店舗は、メーカーのPOPがたくさんついています。
テレビCMでお馴染みのタレントの推奨や、商品の効果・効能を謳っています。

これら化粧品やサプリメントは、スイーツや服と違って「見た目で買わない商品」なんです。
いくらパッケージデザインがきれいでも、自分の髪に合うのか、摂取して健康にどんな効果があるのか分からないと買わないですよね。

なので、絶対説明POPが必要なんです。
先ほど言ったように、展示品と展示台と一体化させたPOPを作りましょう。

またメーカー持ち込みのPOPもよいのですが、自分の店の言い回しに変えることをおススメします。

ある時、肩が凝ってしょうがない私は整体院に行きました。
待合室に座っていると、テーブルの上に黒いイガイガがありました。
POPには、それを肩やアタマに使うとすごくラクになると書いてありました。
さらに、寝る前にこれで肩をマッサージするとよく眠れる、と院長の推奨がありました。
そのコピーは、寝つきが悪い私の琴線に触れました。
そしてそれを買ったのです。

タイミングもあると思いますが、整体院の先生が手書きでつくったその商品POPは説得力ありました。
このように、POP制作の際は貴店の言葉で綴ったオリジナルなものにすることをおススメします。

次に行うのは、POP編集。
売場コーナーだとわかるように什器レイアウトし、商品を展示・陳列したら、POPでコーナーパネルをつくってください。
●●コーナーという名称でも、●●カウンターという名称でも構いません。
つまり、コーナー名を大きく掲示するんです。

できれば、単に言葉だけではなく、演出パネルもつくった方が魅力的に見えます。
サプリメントコーナーだったら、女性がジュースを飲んでいる運動後のシーン、
口腔ケアだったら、白い歯の女性顔写真などをパネルにして、コーナー名の下に掲示するんです。
すると、遠目からコーナーが目立ち、来店客や待合客を売場に誘導できます。

POPは商品を説明する他に、コーナーデザインとしての役割も発揮できるので、ぜひPOPで売場を編集してみてください。

6.まとめ

だいたい分かりましたでしょうか。
VMDによるサービス店舗の物販活性化。

売場塾にサービス店舗のVMD担当がたくさん来る理由はこれでした。
VMDを習って店内に物販スペースを正しくつくり、売上を35倍にした例もありますよ。

また、卒業生の福島翔平さんは歯科物販卸のVMDインストラクターになって、数々のお得意先歯科医の物販業績を上げています。
詳しくはYOU TUBEで歯科医向けVMDチャンネル持っているのでご覧ください。

●福島 翔平さんのYOU TUBE

自店の物販の売上を上げたい方、商品を提供しているメーカーや卸の方、興味ありましたら、ぜひセミナー、説明会にお越しください。
セミナーは毎月、売場塾説明会は無料で毎週行っています。(^^)

●毎月開催 売場塾説明会&セミナー

(VMDインストラクター協会事務局)

テーブルディスプレイ

ディスプレイ布の美しい敷き方

0.はじめに

今回は、ディスプレイ布の美しい引き方についてお話しします。

街中のウインドウやお店のテーブルディスプレイに布が使われていますよね。
大半は、テーブルクロスみたいに使っています。

ドラッグストアのディスプレイ悪い例

ドラッグストアでは、こんな感じで展示物に布を敷いています。
でもキレイでないケースも多々見受けられます。

下記は過去の売場塾のワークショップ作品なんですが、やっぱり布の敷き方、工夫していない人多いかな、と思います。
テーブルにふわっと掛けるだけでは、しわも寄るし、リムやドレープも汚く見えてしまいます。

ディスプレイ授業作品悪い例

今日は、美しい布の敷き方についてお話しします。

1.布はレイヤーする

敷き布がレイヤーされていないディスプレイ

まずは上の写真を見てください。
テーマは「贈り物」だったと思いますが、赤い布が敷かれています。
でも敷き方は何の変哲もない、テーブルクロスのような感じ。

敷き布がレイヤーされているディスプレイ

次に上の写真を見てください。
ちょっとした変化が生まれています

中央に金色の布がライナーのように敷かれています。
なんだかアカデミー賞授与式のじゅうたんみたいですよね。

このように、2枚以上の布をクロスすることをレイヤーと言います
オシャレな人はTシャツ2枚をレイヤーしていますよね。
それと同じです。

1枚だと、ただのランチョンマットもしくはテーブルクロスだけど、2枚以上レイヤーするとディスプレイがおもしろくなります。

おもしろい、というのはinterestでして、funnyではないことに注意してください。

2.ただふわりと掛けただけでは趣は出ない

ここでinterestを趣(おもむき)と解釈しましょう。
アートは趣があったほうがおもしろいんです。

敷き布の敷き方の悪い例

上の写真aを見てください。
布ではないんですけど和紙を1枚ふわりと掛けただけの写真です。

ディスプレイ敷き布のよい使用例

次に写真bを見てください。
和紙を2枚レイヤーしたディスプレイです。
青い和紙とピンクの和紙を使っています。

a,bどちらの方が趣ありますか。
そう、bですよね。

どうしてbの方がおもしろいかというと、変化があるからです。
その変化を細かく言うと下記です。

  • 青い部分とピンクの部分が見える
  • ピンクの和紙は波打っている
  • ピンクの波と桜の枝はテーブルをタテに横切っている
  • 青い和紙も裾がやや波打っている

一方、aのディスプレイは、

  • ふわっと和紙をテーブルにかぶせていて、ところどころ盛り上がっている
  • 桜の枝はテーブルに対して横に置かれている

こんなところでしょうか。

a,bどちらも和紙の軽くて淡い質感、ザラメのつぶつぶ感はします。
でも、bのディスプレイの方が、リズム感があります

リズム感とはなんでしょう?
aのディスプレイは、ボワッボワッという感じのリズムですが、bのディスプレイはサラサラ、サラサラと川が流れているような感じがしませんか。

向こうからピンクの波が押し寄せてきていて、手前ではそれが青に変わって波は収まり静寂が訪れる・・・。
しかも、その波に呼応するかのように桜の枝が、波の波紋に添ってリピートしています。
ちょうどピンクと青の境目に桜の枝が来ているので、奥から手前に色がグラデーションしているようにも見えます。

このディスプレイに音を重ねると、向こうから

  • ザザザー ときて、
  • チョロ、チョロ に変わり、
  • ピチョン という音に最後は変化しています。

このリズムの変化をおもしろくしているのが、和紙のレイヤーと言えるでしょう。

売場塾では、ハーモニゼーションとかオーケストレーションとか、音楽の名前の付いたディスプレイスキルを教えていますが、まさしくディスプレイは音楽なんです。
リズムを感じさせるディスプレイ、それが趣のあるディスプレイなんです。

3.どのようにレイヤーを考えればよいのか

さて、レイヤーのつくり方をお教えします。
まずは二つの和紙の重ね方をリハーサルするといいです。
テーブルに商品を載せる前に、どのように和紙を重ねるのか、推敲するんです。

推敲とは文章を寝るときに使う言葉なんですが、私はディスプレイをつくる時にも使っています。
創作や造作、制作などの言葉は似合わないからです。
「考えながらつくる」
まさに推敲なんです。

推敲は下記の2つを念頭に置くといいです。

●構図的なポイント
・重ねる範囲(オーバーラップ)
・敷く向き(グリッド)
・構造線(リニアスキーム)

●テクニック
・ドレーピング(ドレープさせる)
・タッキング(タックを入れる)


まずは構図的なポイントの3つを念頭に入れながら、最低5つ以上は構図を考えましょう
慣れてくれば、テクニックを使ってタックやドレープも取り入れて推敲します。
ディスプレイは三次元ですが、下に敷く布は絵のように二元的に考えるので、この場合は構成ではなくて構図になります。

A,B,C,D4つの敷き布の構図

試しにAからDの、4つ作ってみました。
どれがよさそうか、吟味しましょう。

ディスプレイABの構図

AとBはタックでつくった三角形を取り入れた構図です。
・重ねる範囲はAは大きめ、Bは小さめです。
・敷く向きはAはピンクの右を下げていて、Bは折り畳みの底辺を下に設けています。
・構造線は、Aは左下に角が向かうようにつくり、Bは右上に角が向かうようにしました。

CとDはタックを入れた四角形を組み合せた構図です。
・重ねる範囲はどちらも半分弱にしました。
・敷く向きはCはピンクが上から、Dはピンクが左から斜めに入るようにしました。
・構造線は赤いライン。ピンクの中央に2.3のラインが入るようにしました。

次に展示する食器やプロップスをどこに置けば、効果的な構図ができるか推敲します。
実際に食器とプロップスを置いてみてください。
その際には、構造線(リニアスキーム)を考えながら置くといいです。
結果、採用したのはBとDでした。

Bは上のディスプレイになりました。
もみじ饅頭ディスプレイです。
三角形の部分に桜の枝を入れました。
ブーケで包んだような、おもしろい構成になりました。

敷き布のよい使い方事例

B,Dとも使ったテクニックはタッキングでした。

三角形のテーブルディスプレイの構造線
ディスプレイのまっすぐな構造線

B,Dに構造線を入れる上になります。
Bは三角形を丸く囲うようにコーヒーカップとお菓子を配置しました。
推敲の結果、青とピンクは逆にし、三角形の方向は左上に変えました。

Dは前述のようにさざ波が川下に流れてくる構造線になっています。

こんな感じで、構図とテクニックを駆使して推敲してみてください。

ちなみに、一番上の写真はDに借景を取り入れたものです。
床に波をイメージする布を敷いてみました。
ますますおもしろいディスプレイになりました。

4.構図が複雑になると解釈は多様になる

生八つ橋のディスプレイ

今度は、先ほどのBとDの構図をミックスしたディスプレイを紹介します。
お菓子は生八つ橋にしました。

これをどう解釈するかはあなた次第。
ディスプレイは見る人にとって趣がありおもしろければいいんです。

私の見立ては左から来た川が、やがては滝となってドドーッと右下に落ちていくような様です。
だから一番目が行きつく先は右の生八つ橋になるんです。
三角形が矢印のようになって私たちの視線を導いてくれるからです。

生八つ橋のディスプレイの構造線

構造線を入れると上になります。
三角形と直線に丸が加わり、より複雑になっています。

ディスプレイ鑑賞も絵画鑑賞と同じだと考えてください。
実際、絵画や写真と同じようにディスプレイも複雑な構図から成り立っているんです。
複雑ながらもリズムを感じるから心地よいんです。

テクニックとしては、タッキングの他に相似形を使いました。
皿の上の生八つ橋を見てください。
三角形が三連続していますよね。

生八つ橋

生八つ橋の三角形も考慮して構造線を入れましたのが下記の写真です。
いかがですか。
三角形が8つ繰り返しているのがわかります。
これを三角形の相似形と言います。

人は同じものが連続しているとリズムを感じるんです。
街頭の電柱、ハイウェイの照明、天井の蛍光灯、教室の机・・・。
どれも同じカタチがリピートしていますよね。
これが人間には心地よいんです。

リピートしているもみじ饅頭ディスプレイ

5.まとめ

だいたいわかりましたか。
布ものの美しい敷き方。

構図とテクニックを駆使すれば、個性的であなたらしいディスプレイができるんです。

とはいえ、最初はシンプルにレイヤーしていくといいです。
アーチスト気取りで、いきなり複雑なレイヤーにすると失敗します。

レイヤーのある敷き布

まずは先ほどのこんなディスプレイから始めてください。
慣れてきたら、時と場合によって複雑なアート表現をするといいです。
画家やカメラマンと同じように推敲してください。

私は、ここ10年間、コーヒーを飲むときに毎週違うテーブルディスプレイを作っていて、早や1000回になりました。
こんな風に日常にディスプレイを取り入れれば、本番でも苦になりません。
インスピレーションはいつもひらめくようになります。

参考に下記のブログも読むと、ディスプレイの構造がますます理解できます。
時間あったらディスプレイの知識深めてください。

●リニアスキームと三角構成

●どうして上から見て三角形にするのか

●リニアスキームの種類


また、ディスプレイのスキルもっと得たい方は、9/26のセンスアップセミナー「展示と陳列の法則」にぜひご参加下さい。
実際にディスプレイをつくっていただくオンラインセミナーです。

●9/26(木) 11時開催「展示と陳列の法則」

●毎月やっているディスプレイ・オンラインセミナー

(VMDインストラクター協会事務局)

ディスプレイをつくる手

ディスプレイ制作5つのコツ

1.ディスプレイとは何か

今日はディスプレイ制作5つのコツを教えましょう。
本来はサブテーマを入れて6つのコツなのですが、初心者向けにわかりやすくお教えします。
VMDインストラクターの方もばっちり復習してくださいね。

ディスプレイとは狭義で言う「展示」のことです。
ディスプレイ担当者は店内に展示物をいろいろな形でつくっていると思います。

  • Gケースの中のお菓子
  • ウインドウのマネキン
  • テーブルの上の雑貨
  • 棚の上の帽子
  • 突き出し棚のメガネ

など、陳列物と違って、展示物は直接お客様がショッピングカゴに入れてレジに持って行くということはないけれど、

  • 今こんなんが旬ですよ
  • これを買えばばっちりです
  • こんなことで困っていませんか
  • これを贈った相手は喜ぶはず

などなど、展示物を使っていろいろ提案してきます。

そう、ディスプレイって提案するんです。
なので、別名プレゼンテーションと私たちVMDプロは呼んでいます。

そんな提案する展示物を魅力的につくるにはどうすればよいか。
それにはディスプレイ制作5つのコツを覚えるとよいです。

2.ディスプレイ制作5つの要素

コツを要素と言い換えましょう。
ズバリ、ディスプレイ制作5つの要素は下記です。

  • テーマ
  • 商品
  • カラー
  • 構成
  • ディスプレイ用品

この5つを使ってあなたの作った店内展示物をもっと魅力的にすることができます。
VPやPPも見違えるようになります。

それではサンプルを見ながら解説していきます。
下記のディスプレイを見てください。

ディスプレイテーマ 3時のカフェオーレ1

スーパーの店員さんがインスタントコーヒーのテーブルディスプレイをつくりました。
テーマは「3時のカフェオーレ」です。
店員さんはこう言いました。

「女の子がカフェオーレを飲みながら、旅行の話をしている雰囲気でつくりました」

うーん、なんかヘンですね。
確かにシンメトリーになっていてダイナミックだけど、わかりにくいです・・・。

VMD担当であるあなたは、そう思うはずです。
そこで、どこがどう悪くてどう直せばいいのか、前述の5つの要素を使って瞬間的に考えます。
これを想起と言います。

あなたもこの想起、やって見てください。
もう写真を一度じっと見てください。
この5つの要素のうち、どれが悪いですか。

  • テーマ
  • 商品
  • カラー
  • 構成
  • ディスプレイ用品

どんな要素が悪いと想起されますか。

答えは~。

  • 商品
  • 構成
  • ディスプレイ用品

でした。
ディスプレイ制作5つの要素のうち、この3つを直せばディスプレイは完璧になります。
逆に言うと、テーマとカラーはクリアしているということです。
ディスプレイを見るとき、5つに分解して見るということを忘れないでください。

ひとつひとつ解説していきます。

●テーマ
お客様がディスプレイを見て感じること、それがテーマです。
この場合のテーマは「3時のカフェオーレ」ですので、このディスプレイを見てお客様はそう感じるか?
感じなければディスプレイを感じるように直さなければいけません。

この場合、カフェオーレの箱は見えてコップもあるので、「3時のお茶」くらいは感じそうです。
なので、まあOKです。

※テーマのことをもっと知りたい方は下記を読んでください。
○VP,PP,IPについて

 

●カラー
ディスプレイのキーカラーは3色以内で行うのが原則です。
これは服のコーディネートに由来してまして、マネキンに服を着せるときは、下記の3色でまとめるとコーディネートがうまくいくんです。

・ベースカラー ・・・ベースとなる一番面積が大きい色
・アソートカラー ・・・次に面積が大きい色
・アクセントカラー ・・・いわゆる差し色のこと

この写真を見ると、

・ベースカラーはパープル
・アソートカラーはオレンジ
・アクセントカラーはグリーン

こんな感じでまとまっているので、カラーはOKでした。

それでは直さなければいけない商品、構成、ディスプレイ用品を見ていきましょう。

 

●商品
商品のフェイスがきちんと見えているか?商品は適正数量か?
これを念頭に入れて写真を見てください。
すると、あらら。

カフェオーレの顔がよく見えないですよね。
目立つのはコップばかり。
コップは小道具なのにずいぶん目立っています。

これでは本末転倒。
コップの代わりにカフェオーレやクッキーを目立つように置きます。
これをフェイシングといいます。
フェイシングは商品特徴がわかるように置く。これが鉄則です。

※フェイシングを詳しく知りたい方はこちら。
○土産店・キャラクターショップの売場づくりのコツ

 

●構成
ディスプレイ構成のことを言います。
VMDのディスプレイはアート性がなければいけません。
「展示物」というくらいですから、ゴミや物置きのように見せるわけにはいきません。
アートを感じさせるには、審美性・演出性・創造性が備わっていなくてはいけません。
審美性とは短時に言うと美しいこと、人間なら美人のことです。
美人はプロポーションがいいですよね。
同じようにディスプレイが美人だとプロポーション、すなわち構成がいいんです。
美人を見て道行く人が振り返るように、「おやっ」と思ってディスプレイを見てくれるんです。

改めて写真を見ると、このディスプレイは残念ながら美人ではありません。
構成が左右対称になっていますが、グライダーのように横に間延びしています。
もっとキュッとタイトにセクシーに構成し直さなければいけません。

※構成について深く学びたい方は下記をクリックしてください。
○ディスプレイ美的センスアップの秘訣

 

●ディスプレイ用品
ディスプレイ用品とは小道具のこと。
ライザーやプロップスという装飾品のことを言います。
このディスプレイの場合は、カフェオーレとクッキー以外はすべてディスプレイ用品です。
コップやぶどう、ノート、テーブルクロスがそうです。
つまり売り物ではありません。

なのに、コップが堂々と「私を見て」と言っています。
商品であるカフェオーレやクッキーをのけ者にして自分だけ目立っています。

また、後ろに立てかけてあるノートも何のためにあるのか、存在意義さえわかりません。
またノートということもわからないかもしれません。

もうわかりましたか。
この場合の「ディスプレイ用品」とは、それらを適正に使っていないということでした。

※プロップスについて詳しく知りたい方はこちら。
○ディスプレイの装飾品「プロップス」とは

3.アタマの中の引き出しを使ってディスプレイを魅力的にする

さて、お待たせしました。
それでは、下記3つの要素を直したディスプレイを披露します。

 

ディスプレイテーマ 3時のカフェオーレ2

今度はBefore Afterで比べて見てください。

ディスプレイテーマ 3時のカフェオーレ3

もうわかりましたね。
どうディスプレイを直したか解説します。

●商品
商品の顔がくっきり見えるようになりました。
Beforeではコップが主役でしたが、Afterでは商品が主役になりました。

さらに、小包装のカフェオーレと箱がセットで展示されているので、2種類の味があるというのがわかりやすくなりました。

 

●構成
グライダーのように横に広がっていたディスプレイが、キュッとタイトにまとめられています。
同じシンメトリーでも、Beforeがメタボな構成になっているのに対し、Afterでは胸と腰がキュッとしまった美人ディスプレイになっているのがわかります。

しかもAfterでは、展示物が4つのカタマリになっていて、それぞれ三角構成になっています。
とてもりりしい姿になりました。

※三角形の構成はなぜよいか。それはこちら。
○ディスプレイ、なぜ三角形がよい?


●ディスプレイ用品
Beforeでは、プロップスのコップの向きがバラバラだったのに対し、Afterではきちんと前を向いています。
また、ブドウは皿に置きました。
Beforeで背後に立てかけていたノートもそれとわかるように手前に置き直しました。

これで美人ディスプレイは完成です。

 

だいたいわかりましたか。
ディスプレイ制作の5つの要素。
これがアタマの引き出しに入っていれば、どんなPPもVPも魅力的にすることができるんです。

VMDインストラクターはこうした引き出しをアタマの中に持っているので、ディスプレイを5秒見たら、どこが悪いかチェックでき、ディスプレイをつくった店員さんに教えることができるんです。

このディスプレイ要素の引き出しは、全部で55あるVMDの引き出しの一つにすぎません。
引き出しを使って売場を直すことを「フレームワーキング」と言います。
詳しくは下記をご覧ください。

●フレームワーキング(R)

4.今度はあなたの番!

ディスプレイテーマ オフィスのコーヒー1

さて、ディスプレイ制作5つの要素がわかったところで、復習です。
同じスーパーマーケットの店員さんが、今度はインスタントコーヒーのテーブルディスプレイをつくりました。

展示商品はスティック状のインスタントコーヒーで、マイルド味とビター味の2種類あります。
店員さんはテーマを「オフィスのコーヒー」として作り、スーパー近くのビジネス街のサラリーマンに買ってもらうことを想定しました。

でも、このディスプレイ、なんかヘン。
あなただったらどう直す?
下記のディスプレイ制作の5要素を使って店員さんに直し方を教えましょう。
まずはどの要素を直すべきか答えてください。

  • テーマ
  • 商品
  • カラー
  • 構成
  • ディスプレイ用品

答えは~。

  • 商品
  • 構成

でした!!

直したものはこちら。

ディスプレイテーマ オフィスのコーヒー2

改めてBefore Afterを見ながら解説します。

ディスプレイテーマ オフィスのコーヒー3


Beforeを見てください。
「なんだか雑然としているなあ」と思うことでしょう。
でも、店員さんに「キレイにしててくれ」と言っても、店員さんはどうキレイにしたらいいのかわかりません。

そこであなたはこうアドバイスします。

「テーマはなんとなくわかるし、ディスプレイ用品もサラリーマンぽくていいです。
色も黒とグレーと赤で3色以内にまとまっています」

「でも、商品と構成がよくないですね

「商品に関してはBeforeを見てください。半分の商品が寝てます
他のパッケージやコップに隠れて商品が見えていない箇所もありますよ。
パッケージはきちっと立ててデザインと商品名が見えるようにしてください

「今度は構成についてお話しします。
Beforeを見ると、商品がバラバラに置かれています
雑然としていて美しくないですよね。

まずは、ビター味、マイルド味、ビターとマイルド味のセット、スティックのみ、の4つに展示をカタマリとして分割してください
4つのカタマリはタイトに三角構成してくださいね。
そして、カタマリとカタマリの間を5.6cm隙間をつくってください。
その隙間のことをネガティブスペースと言います。
そうしたら、箱の向きを斜めに向かせて繰り返し展示してください。
これをリピテーションといいます」

こうアドバイスすると、Afterになりました。


だいたいわかりましたか。
ディスプレイ制作の5つの要素。

これらをあなたのアタマの中の引き出しに入れれば、いつでもキレイでわかりやすいディスプレイをつくることができるんです。

ディスプレイもっとうまくなりたい、と思うあなた、ぜひオンラインセンスアップセミナーにお越しください。
今月のセンスアップセミナーは8/29(木)11時から。
タイトルは、「VMDの基礎知識」です。

○センスアップセミナー「VMDの基礎知識」

どなた様もお待ちしております。(^^)

(VMDインストラクター協会事務局)

POPの法則「オンスクの法則」

POPで売場に客を集める「オンスクの法則」

1.オンスクの法則 プロローグ

今回は「オンスクの法則」についてお話しします。

POPを使って自社売場に来店客を導く法則と言っていいでしょう。
特にショップインショップを作っているメーカーコーナーにうってつけの法則です。

では、どんな状況でこの法則が使えるか解説しましょう。
あなたが駅ビルのフロア内通路を歩いているとします。
スリーコインズという雑貨屋さんにさしかかりました。

スリーコインズ 3-coins

遠くの壁に何か書いてあります。(上写真)
12m先だからよくわかりません。

スリーコインズ 3-coins

でも8mくらいに近づいたら、「FASHION」の字が見えます。(上写真)

スリーコインズ 3-coinsの売場

もう少し近づいてみます。
2m手前に来ました。(上写真)
すると、「FASHION」のPOPの下に「SPRING COLLECTION 2024」の文字が見えました。

スリーコインズ 3-coinsのポーチ

30cm手前。(上写真)
もう棚の商品の手前です。
「ファッショナブルなポーチがたくさんあるわね」と思うあなたはパッグのタグを手に取って商品説明を読みます。

オンスクの法則、なんとなくイメージはわきましたか?
そう、あなたが興味を持った売場に近づくにつれ、その売場の情報がPOPを伝わって分かってくるんです。

POPとは最初は「FASHION」、次は「SPRING COLLECTION 2024」、そして最後はポーチのタグでした。

2.オンスクの法則とは

オンスクの法則のイメージがわかったら、今度は図でわかりやすく説明します。
今度は、スーパーマーケット店内の壁「HAWAIIAN CAFE」のコーナーと仮定します。

あなたはスーパーフロア内通路を歩いています。

 

遠くの売場が見える

●おや (上図)
「おや、あそこになにか茶色の売場があるな、なんだろう」
壁の10m手前なので「、色がまとまった壁だな」としか思えません。
でも少し興味を引きます。

 

少し近づいた売場

●ほう (上図)
8m手前に来ます。
すると、壁の上に大きく「HAWAIIAN CAFE」の文字が見えてきます。
「ほう、ハワイコーヒーの売場かあるのか」
とコーヒー好きなあなたきとても気になります。

 

だいぶ近づいた売場

●なるほど (上図)
5m手前に来ました。
「HAWAIIAN CAFE」のPOPの下に
「ビターエスプレッソ」
「バター風味」
「チョコレート風味」
「赤ワイン風味」
というPOPがあるのが分かりました。

「なるほど、いろいろな味のハワイコーヒーが売っているんだな」
と感心します。

 

すぐ手前の売場

●そーか (上図)
2m手前に来ました。
ここまでくると、先ほどの味別のPOPの下に

「ボトルタイプ」
「顆粒タイプ」
「粉末ステックタイプ」
と書かれているPOPがあるのがわかります。

「そーか、コーヒー豆が液体や粉末などで売っているんだな」
とかなり商品を理解してくれています。

 

30cm手前の売場

●買おう!(上図)
もう壁に30cm手前です。
商品もプライスカードもよく見えます。
赤ワイン風味のコナ地区の顆粒タイプの商品を手に持ったあなたはこう言います。

「買おう!こりゃ週末飲むのにいい」


これがオンスクの法則なんです。
図にまとめるとこうなります。

オンスクの法則

ということで、遠くからお客様が来る視点で売場を描いてみました。
「ハワイアン カフェ」売場にお客様がだんだん近づいてくる様子が分かったと思います。
お客様の動向をオンスクの視点で解説します。

●おや →ハワイアンカフェの壁面全体に気がつく (壁面全体)

●ほう →ハワイアンカフェの売場だと気づく (大見出しPOP)

●なるほど →味別のコーヒー売場になっていることに気づく (中見出しPOP)

●そーか →飲み方別パッケージになっていることに気づく (小見出しPOP)

●買おう! →コナ地区のワイン味のコーヒーパッケージをつかむ (プライスショーカード)

これを壁面だけの図にするとこうなります。

 

オンスクの法則

3.オンスクの法則は新聞の編集と同じ

大谷翔平の記事

オンスクの法則を生かしたPOPによる売場集客の組み立て方がわかったと思います。
それは新聞の表紙の編集の仕方と同じなんです。

上の写真は12月15日(火)の夕刊の表紙です。大谷翔平がドジャーズ入団が決まった日の夕刊です。
これをオンスクの法則と同じように説明します。

●「朝日新聞」題字は店名と同じ

●大見出し「ドジャーズ大谷 勝つために」は大見出しPOPと同じ

●大谷の写真は店のショーウインドウと同じ、つまりVP

●中見出し「この10年成功と思っていない」は中見出しPOPと同じ

●小見出し「入団会見」は小見出しPOPと同じ

●本文はプライスショーカードと同じ

●愛犬デコピンの写真は店内ディスプレイと同じ、つまりPP

どうですか。
改めて両者を見比べてください。

売場と大谷翔平の記事

オンスクの法則と新聞って構造的に同じことがわかります。
「売場づくりは編集と同じ」と、私たちVMDインストラクターがよく言うことがよくわかったと思います。

そんな法則で売場を見ると、オンスク法則があちこちにあることがわかります。
例えばこれ。

スリーコインズ

「KITCHEN」が大見出しで、「食べる」が中見出しということがわかります。

そんな目でオンスクの法則を使って売場をいろいろ見てください。
すると、ああユニクロはオンスクの法則がしっかり生きているな、とか
ヨドバシカメラもPOPがある程度大見出しや小見出しが固定されているな、とか
セリアはPOPが見やすいな、と感じるはずです。

ヨドバシカメラの洗濯機売場

あなたはPOPを店内に適当に貼っていませんか。
そしてデザインもバラバラに組んでいませんか。

オンスクの法則を使ってPOPをデザインし設置しましょう。
すると、あなたの集客したいショップインショップやコーナーにお客様は集まってきてくれます。

POPについて詳しく学習したい方は、ぜひセンスアップセミナー「POP活用体系」にお越しください。
7月開催です。

●センスアップセミナー「POP活用体系」

また、セミナーテキスト本「商空間ディスプレイ」の12章でも詳しくPOPの活用の仕方を教えています。
この機会にぜひ勉強してください。

●VMDセミナーテキスト本「商空間ディスプレイ」

今回は、オンスクの法則でした。

(VMDインストラクター協会事務局)