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ニューヨークヤンキースのグッズ売場

阪神タイガースのアレはどうなっている?

1.阪神タイガーズのグッズ売場のアレ

阪神タイガース、リーグ優勝しましたね。
おめでとうございます。
岡田監督のアレが実現しました。
アレは、今年の流行語候補に完全に入ったと思います

今週土曜日からの日本シリーズも阪神のアレ、期待したいです。

ところで阪神タイガーズのグッズ売場のアレはどうなんでしょうか。
アレとは、グッズ売場のVMDです。
全国各地に阪神グッズ売場があって、百貨店やスポーツ店もコーナーをつくっています。
ネットで調べると少なくとも前年対比50%は売れているみたいで、10倍の売上になったところも。
全体的な経済効果も1000億近くなるみたいです。すごいですね。

今年から売場塾は銀座で行っていて、野球チームのグッズ売場も店舗診断ルートになっています。
なぜなら、東京オリンピック、WBC、ワールドカップラグビー、バスケ、パレーとスポーツチームのキャラクターグッズ売場はここ数年かなり注目されている売場だからです。
コンサートやスポーツなどのエンタメ企業にとってグッズ販売は命綱。
ディズニーランドの物販売上が全体売上の40%というのは周知だと思います。

2.ジャイアンツとヤンキーズのアレを比べてみよう

手元に阪神タイガーズの売場写真はなかったので、羽田空港で撮影した読売ジャイアンツの売場を紹介します。
上記がそうです。

次に紹介するのは、ニューヨーク空港のニューヨークヤンキーズのグッズショップ。
上の写真をじっと見てください。

次に先ほどのジャイアンツの売場をじっと見てください。


次に、左右の写真を見比べてください。
日米のプロ野球チームのVMDを比較してみましょう。違いがわかりますか。

違いは一目瞭然。
鉛直面にありました。

鉛直面とは、建築用語で、垂直面のことをいいます。
VMD用語では、バーチカルマーチャンダイジングといいます。

人は立って店内を歩いています。
視野角といって、人の目は前方を上下50度の視野角の中に収めています。
その視野角の中には売場があります。

このジャイアンツの店を見る私の目の視野角も50度で、水平に切ると上30度、下20度で売場を見ています。
つまり、売場の上の方が目に入る範囲が広いということになります。

 

すると、手前の什器を飛び越して壁も見えています。
天井までは詳しく見えませんが、壁の上部の額もよく見えています。
上の図でわかるように、視野角に入る鉛直面の売場が見えています。

両社の違いは鉛直面、壁と什器の鉛直面の商品のたたずまいが違うんです。

そのたたずまいは、

A.フェイシング
B.ハーモニゼーション
C.ポイントプレゼンテーション

に違いがありました。

 

3.日米野球チームのたたずまいの違い

日米野球グッズ売場

さあ、日米野球対決です。
たたずまいが違って見える理由の一つ、壁面のフェイシングから詳しく見てみましょう。

 

A.フェイシング

ジャイアンツはバスタオルやぬいぐるみ、ポシェットなどが置かれていますが、そのたたずまいは、積み上げられているという感じ。

片や、ヤンキーズの壁面は、カットソーがハンギングされていて服のシルエットやデザインがよく見えます。
また、マグカップやキャップのデザインも見やすく、色も統一されています。
白いマグカップで固めたり、黒いマグカップで固めたりしています。

ヤンキーズの方が断然、デザインやシルエットが見やすく、わかりやすいです。
巨人はバスタオルに選手の名前があるみたいですが、積んであるバスタオルが邪魔してそれが読めません。

 

B.ハーモニゼーション

日米野球グッズ売場

次に壁面のハーモニゼーションを見てみましょう。
ハーモニゼーションとは、「商品をリズミカルに陳列するテクラック」のことです。
そう、陳列には魅力的に見せるテクニックがあるんです。

ジャイアンツの陳列は、どさっと積んであるんでリズミカルではないですね。
バスタオルもそうですし、ポシェットも真横一線にひな壇に並んでいます。
倉庫っぽい感じです。

ヤンキーズの方を見ると、マグカップや帽子が左右対称に陳列されているのがわかります。
しかも、真横一線ではなく波型に見えるように陳列されています。
陳列に凹凸があるんです。
くねくね波型に陳列されていて、アクティブな陳列。
しかもシンメトリーに並んでいるので、とてもきれいなたたずまいに見えます。

波型の陳列ってリズミカル。なんかワルツのようです。
アンドゥトロワみたいな感じの陳列、いいですね。

 

C.ポイント・プレゼンテーション

日米野球グッズ売場

3つ目の理由はポイント・プレゼンテーション。
これもVMD用語です。展示ディスプレイと訳してください。

VMDでは陳列のことをIP、展示のことをPPというんです。
詳しくは下記を一読ください。

●PPとは

島什器の陳列と展示を見てみましょう。
まずはジャイアンツ。

展示物であるPPは、エンドのPOP上部にある二つのバスタオルのようです。
キティとのコラボバスタオルですね。
後はすべて陳列で展示物がありません。片やヤンキーズの島什器の展示物はトルソ。
トルソとは半身のボディマネキンのことです。

I LOVO NYのTシャツがかわいいですね。
マグカップも三角形に積まれています。

確かにTシャツはたたんで積んでいるけれど、そこかしこに展示物があります。
ボディ2つに三角形に展示しているマグカップが2つ。
つまり、ヤンキースの方がジャイアンツよりも展示物が2倍多いんです。

3.オーケストレーションが歩行者の興味を引く

まとめです。

下記の3つの要素とは、オーケストレーションを構成する要素だったんです。

A.フェイシング
B.ハーモニゼーション
C.ポイントプレゼンテーション

オーケストレーションとは、壁面全体のディスプレイのことで、これを魅力的にすればするほど、店舗イメージもよくなります。
そのためには、ぜひ上のA,B,Cをしっかりつくってください。

 

お菓子売場日米対決

今度は、日米お土産売場対決行ってみましょうか。
上の写真右がハワイのお菓子売場、左は羽田空港のお菓子売場です。
どう違いますか。3つの要素で分析してみましょう。
詳しくは解説しませんが違いは判ると思います。

日米で特徴的なことは、アメリカの売場は商品は立てておいてあるけど、日本は寝かせて置いているんです。
ここが大きな日米の違いなんです。

オーケストレーションについてもっと知りたい方は、下記のブログもご覧になってください。
写真で詳しく解説しています。

●オーケストレーションとは


今年のWBCは日本が勝ったけれど、野球グッズ売場VMDでは日米どちらが上かというと、アメリカかもしれません。
巨人ファンの皆さん、ごめんなさい。
私はほとんど野球は見ないのですが、聞かれれば巨人ファンなので、ぜひ巨人グッズ売場よくしてほしいです。

全国のスポーツチームグッズ売場の皆さん、ぜひVMDを活用して魅力的な売場にしてくださいね。(^^)


(VMDインストラクター協会事務局)

アパレルのPPとIP

VP,PP,IPとは

1.VP,PP,IPとは

VP,PP,IPとは、ディスプレイの種類のことです。
ディスプレイの種類は3つあり、種類ごとにタイプ・場所・役割・構成が違います

それぞれ、下記の様に要約します。

●VP(ビジュアル・プレゼンテーション)
タイプ/ 展示
場 所/ 店舗の入り口、ゾーンの入り口、インショップの入り口
役 割/ 通行人もしくは来店客に、店や商品に関心を持たせ、立ち止まらせる。
構 成/ タイト、トライアングル、リピテーション、シンメトリー他

●PP(ポイント・プレゼンテーション)
タイプ/ 展示
場 所/ 商品グループの売場上部、売場手前、売場横
役 割/ 店内を歩いている来店客に、商品に関心を持たせ、引き寄せる。
構 成/ タイト、トライアングル、リピテーション、シンメトリー他

●IP(アイテム・プレゼンテーション)
タイプ/ 陳列
場 所/ 什器の中・上、テーブルの上、冷蔵庫・車など大きな商品は床に直置き
役 割/ 店内にいる来店客に、商品を選択・購入させる
構 成/ 等間隔、タイト、リピート、シンメトリー他

次にVP,PP,IPについて個別に述べるとしましょう。

2.VPについて

一番わかりやすいのが、ショーウインドウです。
すなわち百貨店やアパレルショップのウインドウがVPとなります。

通行人の目を留め立ち止まらせるのに有効な手段と言えるのがこのVPです。
若い女性がウインドウのウエディングドレスに見入ったり、子供が楽器店のトランペットを凝視したりするシーンをイメージできると思います。

VPは、ウインドウでなくてもOKです。
路面店よりもショッピングモールやGMSにテナントとして入居している店は、そもそもドアがなくウインドウもありません。
なので、店頭の展示台にマネキンを置いてVPにしている店はたくさんあります。(下記写真)

アパレルテナントのVP

VPのディスプレイは、店内で販売している商品を展示するのが最低条件です。
なので、単なる花のブーケやクリスマスツリーを置いてもそれはVPになりません。
販売する商品を置かないとVPの意はありません。
また、店内商品をただ置くだけではなく、テーマ性を持って展示するのが原則です。

テーマとは、「お客様が感じること」を言います。
Tシャツ3枚とGパンを置けばよい、というものではありません。
それを見ても、ただTシャツ3枚とGパンがあることがわかるだけです。

  • どこでどんなシーンで着るとよいのか?
  • どんな人が着ると様になるのか?
  • どんなテイストを醸し出してくれるのか?

など、客がVPを見ただけで服を着た情景が浮かぶようにしなければいけません。
例えば、ナチュラルなTシャツとショーパンのデニムをマネキンに着せて、リュックサックを掛けて駆け出すようなしぐさをマネキンに持たせます。
すると、アウトドアというテーマをお客様が感じるのです。

VPは通年計画としてローテーションするのが常で、1週間から1か月単位で変えていきます。商品は時間とともに変わるからです。
通常は、VPに店の打ち出し商品を出すケースが多いです。
アパレルショップなら、店側がその時強力に推し進めたい商品や色、素材、デザイン、シルエットをテーマ設定に基づいてVPとしてディスプレイすることになります。
基本的には、VPは店やゾーン全体を代表するディスプレイと捉えるとよいでしょう。

参考)
●テーマとは

3.PPについて

PPもVPと同じ展示の仲間ですが、VPよりも即興性の強いディスプレイと言えます。
店舗の代表的なディスプレイであるVPに対して、PPは売場の代表的なディスプレイであるため、カセットまたはコーナーと呼ばれる商品グループに連動して決めます。

こちらも展示のため、陳列棚と分けてディスプレイする必要があります。
商品見本展示の意味合いが濃いため、商品グループ直上に置いたり、突き出しテーブルの上に置いたりします。
服の場合はハンガーやマネキンを使うことが多いので分かりやすいと思います。
下記写真の什器上部、壁面上部にあるのがPPです。

PPもVPと同じくテーマ性が必要です。単純に什器の上に商品を一つ置いてもPPとは言えず、「在庫が置いてある」としか見えません。
VP程入念なプランは要りませんが、先ほどの審美性のセンスはほしいものです。
服だったらどんなテイストを発進するか、キッチン用品だったらどんな料理がつくれそうか、おもちゃだったらどんな子供向けにぴったりか、などのテーマを考えてつくります。

なお、PPについてはVPとあいまいな場合が多いので、あなたの店に合った定義が必要です。
それにつきましては下記参照ください。

●ディスプレイの定義をつくろう

4.IPについて

ドラッグストアやコンビニは、店舗デザインやオペレーションの都合上、VPやPPがない場合が多いのですが、最低IPはあります。
IPこそが、客が時間をかけずに

・商品を理解し
・ほしいものを選択でき
・掴んでかごに入れられる

便利なディスプレイです。
下記はスニーカーのIPです。

流通業界では「棚割りをする」という言い方がありますが、これは什器の棚に商品を置く位置決めをするということで、IPもこの働きをするものと考えてください。
ただし、IP=棚割りではありません。
フェイシングと言い、商品がよく映える置き方を考えたり、ハーモニゼーションと言ってリズミカルな並べ方をしたり、と棚割り以上のスキルが求められます。

このIP、難しいのは流動性があることです。
VPやPPはある程度の時間そのまま放っておけますが、IPは忙しい棚のため、欠品や補充が常です。
朝の始業時はきれいな棚だったのに、時間がたつにつれ、崩れていきます
お客様が商品を出し入れ、店側が商品を出し入れするからです。
現場のスタッフのメンテナンスが行き届いている棚はいつもきれいで、歯抜けがありません。
それは棚が乱れたらどのように対処するか、のIPコントロールのスキルが現場にあるからです。無印良品の棚がいつ行ってもはきれいなのは、現場教育がしっかりしているからでしょう。

また、客は商品をひとつひとつ眺めて店内を歩くわけではありません。
商品のカタマリである売場全体をサーッと眺めて歩きます。

売場という大きいくくりは商品で構成されていますが、IPが美しくないと売場全体のたたずまいは汚く見えます
商品を突っ込んただけの棚では、倉庫のようなたたずまいと化すだけです。
美しい売場のたたずまいは、それが壁であれ、島什器であれ、Gケースであれ、IPの総合力がモノを言います。
商品の量、色、置き方、並べ方など、什器1台~5台位を一つの売場単位としてIPを組み立て、たたずまいが美しく見えるようにしましょう。

VP,PP,IPをもっと勉強したいという方のために、毎月ディスプレイセミナーを行っています。
下記で日程とタイトルを確認ください。
●オンライン・センスアップセミナー

(VMDインストラクター協会事務局)

インディジョーンズの倉庫

マグネット売場で店内回遊率を上げよう

インディジョーンズの倉庫

この写真を見てください。
●インディジョーンズの倉庫

ご存じ、映画インディジョーンズシリーズ「レイダーズ 失われたアーク」に出てくる倉庫です。
危険なアークを壮大な倉庫に保管してしまう、というラストシーンです。
これなら、誰も柩を探すことができないから安心ですね。
めでたし、めでたし。

と、さーて、本題に入りましょう。
今日は、「寄りどころ」の話です。

上図を見てください。
なんだか、インディジョーンズの倉庫みたいですよね。
これはあなたのお店かもしれません。

お店に入って、180度見渡してもすべて同じような風景に見えるフロアは、どこに何があるかわからず不安です。
とりあえず、探偵のように手前から棚をしらみつぶしに見ていくしかありません。

でも、よい商品に出会えるのか不安なうえに、どこまで行っても同じような雰囲気なので、歩く気力がだんだん失せてきます。
そのうちに、先に行くのもおっくうになって買い物するのをやめてしまいます。
失われた柩は永遠に見つからないでしょう。

そんなあなたのお店はインディジョーンズの倉庫になっているのです。


「寄りどころ」とは

砂漠の中にぽつんと1人でいると不安です。
敵に見つかりやすいうえに、何かあった時に身を隠す場所もありません。

大きな岩があったり、木が立っていたり、池があったらそこをめがけて歩いていくでしょう。
そこが安全そうに見えるからです。
これが「寄りどころ」です。

同じように、倉庫のような店は砂漠と同じ。
整然と什器が並び、品物が整理整頓して棚に収まっていては、寄りどころが見えません。
フロア内見渡しても、すべてが同じ風景に見えるからです。

上図を見てください。
寄りどころをつくってみました。

倉庫のような店の中に、赤い売場をつくりました。
すると、お客様にとってはそこが気になって「オアシスかもしれない」と、踵を赤い売場の方に向けて歩いていきます。

このようにフロアの中に目標物をつくってやると、人はそれを意識して歩くのです。
これは建築心理学でおなじみの現象で、

  • 人は公園の木の周りに集まる
  • 休憩するときは、壁や柱を背にする
  • 山に登るとき、ランニングするとき、道しるべとなる目標物を設定する

フロアを180度見渡した時に、視覚的に目立つ場所をつくると、人はそこに注視します。
注視するところが来店客の寄りどころになるんです。

「寄りどころ」を色でつくる

上図のように、色で目立つ売場をつくりましょう。

その場所だけ色を変えると、そこだけ目立ちます。
白い壁の中に黒い場所をつくるようなものです。
すると、そこが注目点になります。

色はどのようにつくってもかまいません。
壁紙の色を変える。天井の色を変える。床の色を変える。
中でもお店は壁が一番目立つので、まずは壁の色を変えるのがベターでしょう。

その他、什器の色を変えてもいいし、陳列されたパッケージの色を統一してもいいのです。
遠くから見る売場は、色のカタマリに見えるので、他と違う色を用いて、なるべく単色にするとよいです。
多色にする場合はトーンを合わせて色のカタマリにします。

「寄りどころ」を構造物でつくる

店内店、いわゆるショップインショップのように、フロアの中に別の構造物が立っていると目立ちます。
通常は什器で埋まったフロアなのに、そこだけやぐらがあったり、オーニングがかかっていたりして、まるで店の中に店があるようなつくりをした売場です。

盆踊り会場の中のやぐらを思い出してください。
やぐらは会場の中心にそそり立っていますよね。
こういう構造物をみたら、「なにかやっている!」という感覚でお客様は寄ってくるのです。
上図を見てください。
同じ風景の見通しの中で、丸い赤い柱が目立っています。
これが店内店のイメージです。

やぐらやオーニング以外でも、柱を違うデザインの什器で囲ったり、天井からパラペットを吊るしたりしてもOK。

下図を見てください。パラペットを吊るしています。
このように、ある空間が閉合して見えれば、視覚的に目立つ売場になります

「寄りどころ」を展示物でつくる

展示物とは狭義で言うと、プロップスを利用したディスプレイのことです。
百貨店に行くと、フロアの天井から大きなオブジェが吊るされているのを見ますよね。
クリスマスシーズンには、大きなサンタが宙に浮いています。
テーマパークでは、アラジンの大魔神が天井からにらんでいます。
こうした展示物、特に人型の造作物はとても遠くから目立ちます

それはデパートの屋上から揚がっているバルーンのようなもの
いろんな方向からお客様が注視し、その正体を明かそうと「行ってみよう」ということになるのです。
上図はそのイメージです。

このような展示物は、ディスプレイが上手な人なら100円ショップの装飾品でも作ることができます。
テーマや構成、色使い等をしっかり行って造作物をつくれば、遠くのお客様を引き付けることができます。
プロップスの展示物のつくり方は、下記を参考にしてください。

●ディスプレイの装飾品「プロップス」とは

また、VP(ビジュアルプレゼンテーション)、PP(ポイントプレゼンテーション)も、この原理を生かした展示物です。
プロップスを使っていない場合も多く、商品同士を魅力的に組み合わせることによって、目立つ展示物をつくることができます。

「寄りどころ」をMDでつくる

今まで述べて来たことは比較的、目にすぐ訴えることのできる視覚反応に基づいた売場づくりです。
今度は情報を与えることによってできる、心理的反応に基づいた売場づくりについてお話しします。

MDとは品ぞろえのことです。
品ぞろえをそこだけ変えることにより、目立つ売場に変化させることができます
例えば、下記の様な品ぞろえです。

  • CMなどマス広告で話題になっている商品
  • 花見やハロウイン商品など季節もの商品
  • 廉価商品
  • 人気のブランド商品 etc

これらを遠くの人にわからせるには、文字という情報が有効
つまりサインやPOPが売場に設置されていれば、読んだだけで何の売場かわかります。
それが自分に価値ある情報とわかったら、お客様はその売場に近づいていくでしょう。
上図がその象徴です。
クリスマスと書かれているので、クリスマス用品に関心ある人を引き付けることができます。

人気のブランド商品ならそのブランドロゴ、CMなどマス広告で話題の商品ならCMに出演しているタレントのポスターやパネルが設置されていれば、注目率は増します。

これら情報は、プライスカードのような小さいものではなく、10m位からある程度読める広告の大きさが必要です。

「寄りどころ」をプロモーションでつくる

「寄りどころ」という文字は人が寄っているところという意味があります。
(実は、私の造語です)

つまり、フロアの一角に人がたくさん集まっている風景を設けると、人は「なんだろう」と、そこを注視します。
その要因は、店頭販促(プロモーション)であるケースが多いです。
下記の様なものです。

  • 試飲・試食
  • メイクデモ
  • 作家のサイン会
  • ミニセミナー etc

人が集まる場所は、来店客の注目を集め、文字通り「寄りどころ」となります
東急ハンズの店頭デモ、大丸デパートの試飲・試食、伊勢丹ミラーのメイク相談カウンターなど、多くの場所で見られるのがこの、店頭プロモーションです。
図にすると上の様になります。

人は元来、人が集まるところに注視する性質があるので、フロアの中にこのような寄りどころをつくってやりましょう。

マグネット売場を戦略的に配置する

そろそろ「寄りどころ」を「マグネット売場」に言い方を替えます。
マグネット売場の原理が今までの話で分かったと思います。

マグネット売場づくりには注意点があります。
お客様を歩かせて店内滞在時間を長くつくるには、ただ「目立つ売場」を作るだけでなく、これらを戦略的にフロア内配置しなければいけません

最初のマグネット売場に人が集まったら、そこから第2のマグネット売場に誘導する、第2のマグネット売場からまた第3、第4・・・に誘導していきます。

フライングタイガー・コペンハーゲンのように、一方通行の強制的な順路ならまだしも、普通の店は入ってすぐにUターンして帰ることができます。
お客様の進行方向に矢継ぎ早にマグネット売場を設定していかないと、動線長(お客様の歩く長さ)は長くなりません。

そこで、下記のマグネット配置が望まれます。

  1. 第1マグネット売場から第2マグネット売場が見える配置
  2. 第2マグネット売場から第3マグネット売場が見える配置(あとはこの繰り返し)
  3. フロア内主通路沿いにマグネット売場がある配置
  4. 通路の突き当りにマグネット売場がある配置
  5. 店の奥にマグネット売場がある配置

4,5のイメージは上図になります。

上記1~5のように客導線を想定した配置プランを立てて、どのようなストーリーでお客様を歩かせるのか考えなければいけません。
これを「導線ストーリー」と言います。

導線ストーリーがうまく行くと、お客様の店内滞在時間は増えます。
売場立ち寄り率、買い上げ率も増えていくので、お店の売上は上がります。

まとめ

あなたのお店は、インディジョーンズの倉庫になっていませんか?
フロアが倉庫状態になると、お客様は手探り状態で商品を探さなくてはいけません。
それはまるで砂漠をさまよっているよう。

適度なオアシスをそこかしこにつくって、お客様に歩く目標をつくってやりましょう。
それがマグネット売場です。

マグネット売場を戦略的に配置すると、来店客の店内回遊率は増え、お店の売上も上がります。

(vmd-i協会事務局)

日米のVMD用語

PP,IPと外国で言っても通じない

今回の話は、当社がなぜ「明快な言語でVMDを教える」ことを大事にしているのか、わかると思います。

●フレームワーキング(R)

まず、あるモノやコトと、言葉の結びつきには絶対性がなく、住んでいる地域や国、民族でバラバラということを紹介します。

蝶と蛾の違い

日本語にあってフランス語にない言葉と言えば、「蛾」ですよね。
フランス人は蝶と蛾を区別する言葉がなく、両方とも「papillon パピヨン」といいます。

日本人にはかなり衝撃だと思います。
蝶というと優雅な舞いが想像され、「蝶のように舞い、・・・」みたいに華麗な感じを想像します。

「蛾のように舞い、ハチのように刺す」だと、うーんなんか汚いな・・・という感じ。
でもフランス人にとって、蛾も蝶も同じなんです。

恋と愛の違い

今度は、恋と愛という言葉について。
日本人は、恋と愛を言葉で区別するのに、アメリカ人は恋も愛も「Love ラブ」
同じなんです。

恋と愛は同じじゃん、という認識は日本人には理解できません。
ちなみに「恋人」と「愛人」はすごく違うのに、米国は両方とも「lover」。

実は逆もあるんです。

イギリスはウサギが2種類

それはウサギ。
イギリスでは、「ウサギ」は明確に二つに分けられています。
それは、「Rabbit ラビット」と「Hare ヘア」

ラビットとヘアの違い、わかりますか。
ラビットは穴を掘って集団生活する、おとなしく人に馴れやすい動物。
だからペットにしやすい。
ヘアはラビットより耳が長くて耳の先端が黒い。後足はヘアの方が長い。

うーん、我々にとってウサギはウサギだから、足や耳はいちいち見ないんです。
でも、確かにアリスに出てくるウサギや、ピーターラビットは穴を掘るからやっぱラビットなんでしょうね。

と思ったら、「不思議な国のアリス」に出てくるウサギは、最初に出てきて穴に落ちるウサギはラビットで、お茶会に出てくるウサギはヘアということでした。

わ・わからない・・・・。
どっちもウサギなのに。

確かに、オーストラリアに行ったときに、カンガルーを見たんですが、あっちだと、カンガルーとワラビーを使い分けているようでした。
ワラビーと言うと、靴しか思い浮かばないんですが・・・。

PPとIPの話

と、すごく長い前置きでしたが、VMD用語も同じで、PP,IPを区別しているのは日本人だけなんです。

そう、外国人にVPは通用しても、PP,IPは通用しないんです。
昨年お会いした、イギリスで長年VMDを勤めていた人も言っていました。
「そうなんだよね。イギリスにはPPもIPもないんだよね、ディスプレイは全部VPだもの」とうなづいていました。

実際、VMDの海外マニュアルや英語の文献を読んでも、PPやIPは出て来ないんです。
どうやら、Visual Presentationという英語は全般的なディスプレイを指しますが、PP(Point Presentation)やIP(Item Presentation)に相当する言葉はないようです。

私の感覚では、

PPは「フォーカルポイント focal point」や「アウトフィッティング outfitting」が近いかな、と思います。
フォーカルポイントは「空間の中で目立つところ」、アウトフィッティングは「服をコーディネートして見せること」を言うので、PPの代わりの語だと解釈してもいいかもしれません。

問題はIP。
IPは日本語では陳列という認識ですが、そもそも陳列という言葉が英語にありません
陳列と言う言葉を辞書で引くと、「Display」になってしまいます。

うーん、日本人は陳列とディスプレイは別もんなのですが、外国人に取ってIPもPPもVPもディスプレイになってしまいます。
Displayという言葉はあるので、ディスプレイを外国人が格好よく言う言葉がVisual Presentationなのでしょう。

おっと、ここでまたまた訂正!!
外国ではVMDと言わず、VMと言うんでした。
外国人にVMDと行っても通じないです。
そもそもVMDは和製用語ですから。

日本ではMDという言葉がマーチャンダイジングの短縮語として定着したので、それにV(ビジュアル)をくっつけてVMDにした・・・と言うのが定説になっています。
そもそも、外国ではMDと言うと、「品揃え」でなく「医学博士」になってしまいます。
Doctor of Medicinの意味です。
ややこしいですね。

なぜ、和製VMD用語が多いのか?

日本の流通はアメリカをお手本にして、VMDを輸入してきましたが、繊細な日本人はさらにVMD用語をつくって、細かく売場づくりを規制した・・・と言えます。
和製VMD用語を見てみましょう。

・リモデル remodel
 →お店をコンセプトから変えること。
 →アメリカでは、「改築」という意味でVMD用語ではない。
・リバイス revise
 →売場を短時間で編集すること。
 →アメリカでは、「本を修正する」という意味でVMD用語ではない。
・オーケストレーション orchestration
 →壁面の全体ディスプレイ
 →アメリカでは、「楽隊の配置計画」という意味でVMD用語ではない。
ハーモニゼーション harminization
 →棚の陳列に調子を加えること。
 →アメリカでは、「曲の旋律に和音を加える」という意味でVMD用語ではない。

美術用語から来ているVMD用語も多い

本来は絵画の用語ですが、それをVMDに応用している用語も多く、下記が代表格です。

・三角構成 triangle
 →絵の中で、人やモノ・風景の配置を三角形にすること
 →VMDでは、展示物や陳列物を三角形にすること。
・ネガティブスペース negative space
 →絵の中で、人物やモノが置かれていない空間。
 →VMDでは、何も置かない空間のこと。
・つなぎ rinking
 →絵の中で、人やモノを何かでつないで一体感をつくること。
 →VMDでは、ガーランド等で商品と商品をつなぐこと。
・群化 tight
 →絵の中で、人やモノを固めること。
 →VMDでは、商品を集めてタイトに陳列、またはタイトに展示すること。

これらを見ると、やっぱVMDって美術とリンクしているんだなと言うのがわかります。

そもそも用語って、あるモノ・コトを恣意的に言葉と結び付けて他と区別し、わかりやすくしているものなんです。
これは言語学者のソシュールが言った言葉なんですが。

なので、日本人にとってはVP・PP・IPという言葉をつくって、ディスプレイを恣意的に区別していると言えましょう。

ただし、これはアパレル店舗の話。
コンビニやドラッグストア、家電店でVP・PP・IPをつくることは難しいと思います。
だって、IPしかありませんからね。(笑)
その場合、IPを「陳列」、PP,VPを「展示」と言い換えるとよいです。
IP中心なのに無理にVP,PPを設置しなくてもよいです。

ちなみに当社のVMD用語辞典は下記をクリック。
全国のVMD担当者の皆さん、ぜひVMD用語、身に着けてください。~

(vmd-i協会事務局)

Jクルーの店内

ディスプレイの定義をつくろう

当社は3か月に1回、ディスプレイセミナーを日本橋で開催していて、VP,PP,IPをお教えしていますが、意外と覚えきれていない方がいます。

●VMDディスプレイセミナー

そんなわけで、今回はVPとPPの定義についてお話しします。
まずはディスプレイ用語、VP,PP,IPの説明をします。

●VP(ビジュアル・プレゼンテーション)
店前を歩いているお客様を立ち止まらせる大きな店頭のディスプレイのこと。

●PP(ポイント・プレゼンテーション)
店内のお客様を回遊させる、比較的大きなディスプレイのこと。

●IP(アイテム・プレゼンテーション)
お客様が選択購入しやすいように陳列されている商品ディスプレイのこと。

さて、VPを定義してみましょう。

「VPはフロア商品を代表するディスプレイ」
「VPはフロアの打ち出し商品のディスプレイ」
「VPは店舗の商品を代表するディスプレイ」
「VPは店舗の打ち出し商品のディスプレイ」

と定義1を書いてみました。

次に

「VPの展示商品はフロアのIPから選択する」
「VPの展示商品はフロアのIPの中になければいけない」
「VPの展示商品は店内のIPから選択する」
「VPの展示商品は店内のIPの中になければいけない」

と定義2を書いてみました。

すると、VPに展示している靴は、IPとしてこのフロアのどこかになければいけません。
VPに展示しているバレエのドレスも、IPとしてフロアのどこかになければいけません。

今度は、PPの意義1を書いてみます。

「PPは売場の商品を代表するディスプレイ」
「PPは売場の打ち出し商品のディスプレイ」

次に、PPの意義2を書いてみます。

「PPの展示商品は売場のIPから選択する」
「PPの展示商品は売場のIPの中になければいけない」

とすると、この売場のPPはOK。

アパレル店のPP

これもOK。

お菓子売場のPP

これもOK。

お菓子テーブルのPP

これはダメです。

コーヒー器具のPP

これもダメです。

紳士服店のPP

どうしてダメなのか、わかりますか?
詳しく解説します。

コーヒー器具売場を見ていきましょう。
確かにPPとしている上部の四角い箱に入った商品は下段のIPにあります。

しかし、PPにあってIPにないものもあります。
それは、一番上の中央の箱に入っている丸いサーバーです。
これが下にないんです。

ですので、PPとしては定義に外れるので×。
丸いサーバーを下げるか、IPに丸井サーバーを入れます。

次に、紳士服売場を見てみましょう。
まずオブジェがありますが、これはPPではありません。飾り物です。
シャツがたたんで置いてありますが、下段にはありません。
ですからPPとしてはバツです。

あなたはこう思うでしょう。
「そんな固いこと言わないで、見逃してやって」。

いえいえ、見逃すことはできません。
見逃すこと イコール 定義は意味をなさない・・・ことになるんです。

定義はそんなに甘くないことは、新型コロナウイルスのガイドラインを見れば一発でわかります。

例えば、コロナの第3.4ステージの定義は下記です。

新規感染者数は1週間で人口10万人あたり15人以上ならステージ3、
25人以上ならステージ4。

「あー、今日東京都は25人だった。せっかくずっと24人だったのに。
見逃して。第3ステージのままにして。一人くらいいいじゃない」

と言ったあなたに対して、国民の怒り心頭は頂点に達することでしょう。

そうなんです。
コロナ対応のガイドラインは何のためにあるかと言うと、国民の命を守るためにあるんです。

VMDのガイドラインは命にかかわらないかもしれないのですが、あなたの担当しているブランドの命にかかわること間違いなしです。
ガイドラインによる定義をうやむやにしたまま、店舗を運営していくとやがてはショップブランドの瓦解につながります。

さて、改めてPPの定義を見てみます。

PPの意義1。
「PPは売場の商品を代表するディスプレイ」
「PPは売場の打ち出し商品のディスプレイ」

PPの意義2。
「PPの展示商品は売場のIPから選択する」
「PPの展示商品は売場のIPの中になければいけない」

これもまだうやむやな言葉がありました。
それは「売場」という言葉です。

売場と言う定義があいまいだとやっぱり、PPはフロアにあるものならなんでもござれになってしまいます。
なので売場の定義をしっかりつくることが必要です。

・ここでいう売場とは、MDグループを指します。
・MDグルーブとはテーマに基づく商品群のことで、
 壁面なら5スパン以内、島什器なら3スパン以内とする。
・例えば、スポーツアパレルならば、ランニング、トレーニング、サッカーなどをMDグループと言う。
・例えば、ドラッグストアならば、風邪薬、コンタクト用品、メイク器具などをMDグループという。

こうすると、「売場」の定義が明確になっているので、6スパンを超えたIPはPPとして展示してはいけない。
自動的に、他のMDグループに属する商品はPPに入れてはいけない。
ということになります。
図をご覧ください。

PPの定義

棚の赤い部分は別MDグループの什器ですので、そこの商品が5スパンのMDグループのPPに入ってしまうと×ということです。

なのに、「他の売場の商品もPPに入ってしまっているけど、まあいいでしょう」
とVMDインストラクターのあなたが指導してしまうと、もうこの時点で定義は崩れてしまうし、ガイドラインは意味をなさなくなってしまいます。

そして店舗スタッフも「PPに使う商品は店内にあるものならなんでもいいんだ」ということになり、ガイドラインが意味ないものになってしまうんです。

たかがガイドライン、されどガイドライン。
これがあるおかげで、コロナ禍のオリンピックもスムーズに遂行できるんです。

そして、ガイドラインは更新していくということも忘れないでください。
「どうしてもこのままではうまく売場を運用できない」ということがあれば、協議の上、改定するといいでしょう。
すると、スムーズに行かなかったところが改善されていきます。

だいたいわかりましたか。
VMDのディスプレイはあいまいなところがあるので、都度定義をしっかりつくってあいまいさをなくしていくことが必要です。

(VMDインストラクター協会事務局)