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アートとディスプレイ

アートなディスプレイは自然と秩序の中間

アートとは何か

今日は、アートなディスプレイとはどんなものか?についてお話しします。

商品を売らなければいけない商業の世界において、ディスプレイは広告そのもの。
絵や写真、彫刻やインスタレーションなどの美術作品は、そのものをアートとして売りますが、VMDの場合はディスプレイに使われている商品を売る、という宿命があります

それが、VMDのディスプレイは商業ディスプレイである所以です。

大丸のルイヴィトンのディスプレイ

もちろん、美術要素がないわけではありません。
上はデパート大丸のルイヴィトンのディスプレイですが、見事にアートが加わっています。

上は街で見かけた質屋のディスプレイ。
ルイヴィトンをただウインドウに置いただけになっています。
これでは、アートなディスプレイとは言えず、ウインドウは単なる物置きになっています。

物置きになっているディスプレイは通行人に見向きされません。
VMDのディスプレイはまずは通行人の目を向けさせなくてはいけません。

それにはVMDのディスプレイはアートでないといけないのです。
アートはWikiで次のように定義されています。

アートとは、表現者あるいは表現物と、鑑賞者が相互に作用し合うことなどで、精神的・感覚的な変動を得ようとする活動を表す。

商品を単に置くだけでは、それを見る人には、「ディスプレイされている」「展示されている」とは感じません。
単なるモノが転がっているだけです。
ところがモノにアートを加えると、「温かい」「格好いい」「シンプルだ」などと感じが見る人に沸き起こります。

つまり、ディスプレイの発信する視覚的な情報が、見る人の脳に変化を与え、何かを感じさせるわけなのです。
当然、何も感じないディスプレイは素通りされるでしょう。

この話はディスプレイだけでなく、常日頃から目にするすべてのもの、それがコップであれ眼鏡であれ、建物であれ、テレビCMであれ、何も感じないものは素通りされる運命にあります。

例えば新聞広告。
上はサボンの美しい広告。
デザイン要素である色や写真がとても映えています。
新聞をめくっていて思わず見入ってしまいました。
広告会社に長年勤めていた私は、常に素通りされない広告をつくってきました。

VMDも同じ。
VMDのつくるディスプレイは、VP,PP,IPといって店内や店頭につくられますが、これをお客様に素通りされるとツライわけです。

※参照/VP,PP,IPとは

なので、私たちはいかに素通りさせずにお客様にディスプレイを見ていただけるか、常にアートを意識しながらディスプレイを組み立てているわけです。

自然と秩序の話

美術に関する文献でよく言われていることが、「アートは自然と秩序の中間がいい」ということ。

ディスプレイのバランスは自然と秩序の中間

自然とは人間の手の入っていない状態をいいます。
例えば海や湖、森や高原など、すべてが自然と言えましょう。

秩序とは、ある法則に基づいた物事の状態を言います。
例えば、きれいに整理された庭は秩序そのものです。
芝生には花壇がつくられ、ヒマワリが等間隔に並べられています。
池はひょうたんに形どられ、その中にコイが泳いでいます。

ところが、家に人が住まなくなると秩序は乱れ、自然に帰ってしまいますす。
芝生はなくなり、雑草が生えヒマワリは絶え野生の花が咲き実が落ちます。
池は大量の落ち葉で覆われ、ひょうたんの形も消滅、水は泥で濁ってしまいます。
つまり、自然が幅を利かせてしまいます。

軽井沢の写真で言うと、上が自然の状態。
下は秩序ある状態です。

軽井沢星のやの秩序ある庭園

実はこれ軽井沢「星の」やの庭です。(^^)

星のやの中を流れる川ってアートになっていてなんかおもしろいです。
自然の川もいいけれど、このように人の手が加えられて秩序が感じられる川もよいです。

この観賞用の川は「楕円の島とゆるかやなせせらぎ」のリピートになっていて、お茶を飲んでいる私たちの癒しとなっていました。

このように、雑草生い茂った自然の川よりも、人の手が加えられた秩序感じるアートな川の方が落ち着く感じがするのです。
テイストとしては、「ゆったり」「ほっこり」「のびのび」という感じです。

ディスプレイ制作での自然と秩序のさじ加減

今度は売場塾のワークショップの写真を使って説明します。

「三角構成でコップのディスプレイつくって」と言って受講生にディスプレイ作っていただきました。
何もヒントを与えずにつくってもらうと、たいがい下のような形になります。

三角構成 秩序あり

確かに三角構成なんですが、物足りない。
同じ方向で3色のコップを置き、シンメトリーに配置したコップは、三角構成としては問題ないんですが、アート性はあまり感じないです。

あまりにも「秩序」がありすぎて、アートらしさに欠けるんです。
この場合の「秩序」要素は、下記です。

  • 三角構成がリピートしている
  • コーヒーまたはジュースがテーマになっている
  • シンメトリーに配置している
自然すぎる三角構成

一方、こちらはどうでしょう。(上の写真)
あまりにも「自然」がありすぎて、やっぱりアートらしさは欠けています
この場合の「自然」要素は下記です。

  • コップの柄がバラバラ
  • コップの素材やサイズもバラバラ
  • 輪郭はずんぐりむっくり

この自然的なディスプレイと秩序的なディスプレイを比較してみましょう。
下写真を見てください。

ディスプレイ自然と秩序

いかがですか。
秩序があった方がよさそうな気がしますか?
でも秩序がありすぎると「四角四面」になってしまい、面白みに欠けます。
上写真の右は「三角三面」に面白みに欠ける、といっていいでしょう。

そこで、自然と秩序の中間の三角構成をつくってみました。
こちらです。

ほどよいアートな三角構成となっているのがわかります。
どこらへんがアートかというと下記です。

  1. 構造線がタテとヨコの2種類になっている。
  2. オレンジから緑のコップが飛び出していて動きを感じる。
  3. 伏せているコップと伏せていないコップを混ぜている。

つまり、変化があって楽しそうな三角構成になっているんです。
一見バラバラに見えるが、構造線を使った秩序が三角構成をアートにしているということです。

※参照/構造線(リニアスキーム)

自然に秩序を加えよう

さて、まとめです。
今度は街中のディスプレイを見てみましょう。

ハワイ ホノルル空港のディスプレイ

このディスプレイ、なんかゴチャゴチャし過ぎてアート性感じないですよね。
先ほどお見せした軽井沢の自然みたいな感じです。
これ、ホノルル空港のお土産のディスプレイなんです。

このように自然が過ぎると、空き家が草や木で覆われ朽ち果てたようになってしまいます。
秩序があるホノルルのDSFのディスプレイの方がよいですよね。(下写真)

 
 
さて、こちらはどうですか。
あなたが、スーパーマーケットのVMD担当だとして、「オフィスのインスタントコーヒー」というテーマでディスプレイを作りました。
自然寄りのコーヒーディスプレイ

うーん、なんか自然すぎてバラバラに見えますね。
やっぱり雑草生い茂る軽井沢です。

星のやの人工川のように秩序を与えました。(上写真)
秩序である型は下記の通り。

  1. トライアングル(三角構成)
  2. リピテーション
  3. マスターパターン
  4. 面積

2は繰り返し構成という型です。
繰り返し展示することにより、リズミカルな印象を見る人に与えます。

3マスターパターンとは、黄金比率でお馴染みの型。
この場合は、下のインスタントコーヒーの高さを1とすると、上のインスタントコーヒーの高さは、1.618になっています。
つまり、コーヒー箱の上下が黄金比率に配置されています。

※参照/ディスプレイの黄金比率

4.面積とは、群化の7つの法則のうちのひとつで、展示の周りに余白をつける型です。
余白はネガティブスペースといって、これがあると展示物は美しく目立ちます。

※参照/群化の法則とは

どうですか。
やっぱり自然と秩序の中間が心地よく、アート性もバツグンというのがわかったと思います。

自然すぎると、雑草ぼうぼうの深い森の中になってしまい、落ち着きません。
秩序過ぎると、四角四面で面白みのないものになってしまい、平凡です。

ディスプレイ制作を日々営んでいる皆さん、秩序と自然の中間を捉えてつくってくださいね。
すると、ディスプレイはアートになり、人々の目を捉えてくれます。

自然と秩序の備わったディスプレイをつくってみたい方は、ぜひディスプレイセミナーにお越しください。
半年に一度銀座で開催しています。
●ディスプレイセミナー

(VMDインストラクター協会事務局)

アーチクルプレゼンテーション

買うのに難しい商品はAPディスプレイが有効

1.APは商品・展示台・POPで完成する

皆さんは、VMD用語としてAP(アーチクルプレゼンテーション)ってあまり聞いたことないと思います。
売場塾を受講した方でしたら、わかると思います。
これ、売場塾の造語なんです。

アーチクルとは商品のこと、プレゼンテーションとはディスプレイのことです。
直訳すると「商品自体のディスプレイ」という意味です。

ディスプレイとは陳列や展示に使う言葉なんですが、このアーチクルプレゼンテーションって陳列と展示の中間のディスプレイと思ってください。
PPにもなるし、IPにもなるんです。

PPとIPとは、展示と陳列のことです。詳しくは下記ご覧ください。
●PP,IPとは
●ディスプレイの定義


APは、ズバリ下記3つで構成されるディスプレイです。

  1. 商品
  2. 展示台
  3. POP

商品・展示台・POPが一緒になっているディスプレイは、家電を例にとるとわかります。
例えば、下の写真は家電店の電子辞書売場です。

電子辞書を買う時、商品自体のデザインよりも、コンテンツや機能が優先されると思います。

例えば英語の電子辞書なら、

  • 英語はどの位の単語が入っているのか
  • 英語発音機能はついているのか
  • TOEICテストにどの程度対応しているのか
  • 英英辞典や慣用句辞典も入っているのか

などなど、欲しい情報がすぐに取り出せるか?、パソコン音痴でも簡単に使うことができるのか?などが、購入の決め手になるでしょう。

POPはこれら情報を発信してくれます。
そしてこのPOPは商品の近くになければいけません。
お客様は商品を見ながらPOPを読むからです。

しかもその商品が棚にあって、商品とPOPが展示台の上に載っていれば、ディスプレイがまとまっているので注目率も上がります。

例えば、下の写真を見てください。
ホームアロマを売っている売場です。

透明のアロマボトルが1つ、大小の黒いアロマボトルが2つ、パラパラと並んでいるのがわかります。
そこにPOP(プライスカード)がありますが、POPがどの瓶を指しているのか、少しわかりにくいですよね。

次に下の写真を見てください。

アロマボトルとPOP(プライスカード)が白い台の上に展示されています。
この方がディスプレイがまとまっていて、POPがヨコの透明ボトルを指しているのもわかりやすいです。

これがAP(アーチクルプレゼンテーション)なんです。

2.APのつくり方

それではAPのつくり方を図解します。
下のようなヘアワックスの売場があるとします。

POPが商品の谷間にありますが、このPOP、どの商品を指しているかわかりません。
本当は右の青い商品の説明をしているPOPなのですが、緑色のボトルの説明をしているみたいです。

そこで、APをつくってみます。
下図のように、展示台を制作または購入して、POPと商品をその展示台上に置きます。
展示台はL型にし垂直の背面直部分をPOPパネルにすると、さらに分かりやすくなりました。

できたAPをヘアワックスの棚に置いてみましょう。
下図のように、青いボトルは他の商品から独立して見えるのがわかります。
同じように、オレンジや緑のボトルもAPにした方がよいでしょう。

AP、簡単にできることが分かったと思います。
このAP、閉合の法則も用いているんです。

●閉合の法則

閉合の法則でつくった下のテーブルディスプレイを見てください。
上と下とで、ディスプレイは囲った方がメリハリがつくし、目に留まりやすいこともわかります。

後は、この3つの展示台に載っている商品の近くにPOPをセットすれば、APは完成します。

3.いろいろなAP

○文具

APは化粧品や家電の他にもいろいろなところで活用できます。
例えば、文具です。

上の写真を見てください。
ロルバーンの手帳が白い展示台の上にディスプレイされていて、その後ろに演出POPが来ているのがわかります。
これ、明らかに下段の手帳をピックアップして展示台に載せていることがわかります。
商品・展示台・POPで一体化されたAPですね。

○お菓子

APはお菓子でも活用できます。上の写真を見てください。
これはヨックモックのビスキュイのディスプレイですが、上部がAPになっているのがわかります。
下段は陳列、つまりIPです。

最上段は演出POP、その下は箱の中身、その下は食品サンプル、そして最下段の陳列売場をつないでいます。
なだらかなL字になったAPとIPの連結、見事です。
ビスキュイ・キャレとクーシュの味別にタテくくりになっており、色もストライプにカラフルに並んでいます。

○くつ

次は靴を見ていきましょう。
上の写真はパンプスのAPです。

靴が展示台に載っており、展示台のスカート部分が商品説明POPになっているのがわかります。
このPOPを読めば、この靴の機能がいかに優れているかが分かるようになっています。

通常の靴は棚に並べてプライスカードを設置する程度ですが、この靴はAPになっています。

4.APは難しい商品にあっている

ここまで来て、気づいたことがあると思います。
そう、APを活用する商品は、難しい商品に多いんです。
難しいという意味は、商品を見るだけではお客様は買わないということです。

  • 電子辞書は商品を見ただけでは、コンテンツがわからない
  • 化粧品はボトルを見ただけでは、髪や肌への効果・効能がわからない
  • 手帳は表紙を見ただけでは、どのように使っていいのかわからない
  • 洋菓子は外箱を見ただけでは、中身がどうなっているのかわからない

ということです。
商品とPOPが一体化しているからこそ、お客様への商品訴求力は増すのです。

もちろん、商品を見ただけで買う場合も多々あります。

  • おいしそうなショートケーキや刺身
  • 柄や形が魅力的なコーヒーカップ
  • カラフルなTシャツやセーター
  • 色とりどりの花や花瓶

などはそんなに説明しなくても、見たままお客様は買うでしょう
「あ、これおいしそう」みたいな感じで。

だいたい分かりましたか。
APの使い方、つくり方。

商品・展示台・POP、これらを組み合わせて、あなたの担当する商品をお客様がすぐに理解できるようにしましょう。
陳列の中にたくさんある中で抜きんでた存在にもなります。

ディスプレイに興味が出てきた人は、ぜひ銀座のVMDセミナーにお越しください。
銀座のお店をめぐるツアーも同時開催です。
お店の中のAPを見つけましょう。(^^)

●VMD売場づくりの基礎セミナー
●同時開催・銀座フィールドワーク

(VMDインストラクター協会事務局)

テーブルディスプレイ

ディスプレイ布の美しい敷き方

0.はじめに

今回は、ディスプレイ布の美しい引き方についてお話しします。

街中のウインドウやお店のテーブルディスプレイに布が使われていますよね。
大半は、テーブルクロスみたいに使っています。

ドラッグストアのディスプレイ悪い例

ドラッグストアでは、こんな感じで展示物に布を敷いています。
でもキレイでないケースも多々見受けられます。

下記は過去の売場塾のワークショップ作品なんですが、やっぱり布の敷き方、工夫していない人多いかな、と思います。
テーブルにふわっと掛けるだけでは、しわも寄るし、リムやドレープも汚く見えてしまいます。

ディスプレイ授業作品悪い例

今日は、美しい布の敷き方についてお話しします。

1.布はレイヤーする

敷き布がレイヤーされていないディスプレイ

まずは上の写真を見てください。
テーマは「贈り物」だったと思いますが、赤い布が敷かれています。
でも敷き方は何の変哲もない、テーブルクロスのような感じ。

敷き布がレイヤーされているディスプレイ

次に上の写真を見てください。
ちょっとした変化が生まれています

中央に金色の布がライナーのように敷かれています。
なんだかアカデミー賞授与式のじゅうたんみたいですよね。

このように、2枚以上の布をクロスすることをレイヤーと言います
オシャレな人はTシャツ2枚をレイヤーしていますよね。
それと同じです。

1枚だと、ただのランチョンマットもしくはテーブルクロスだけど、2枚以上レイヤーするとディスプレイがおもしろくなります。

おもしろい、というのはinterestでして、funnyではないことに注意してください。

2.ただふわりと掛けただけでは趣は出ない

ここでinterestを趣(おもむき)と解釈しましょう。
アートは趣があったほうがおもしろいんです。

敷き布の敷き方の悪い例

上の写真aを見てください。
布ではないんですけど和紙を1枚ふわりと掛けただけの写真です。

ディスプレイ敷き布のよい使用例

次に写真bを見てください。
和紙を2枚レイヤーしたディスプレイです。
青い和紙とピンクの和紙を使っています。

a,bどちらの方が趣ありますか。
そう、bですよね。

どうしてbの方がおもしろいかというと、変化があるからです。
その変化を細かく言うと下記です。

  • 青い部分とピンクの部分が見える
  • ピンクの和紙は波打っている
  • ピンクの波と桜の枝はテーブルをタテに横切っている
  • 青い和紙も裾がやや波打っている

一方、aのディスプレイは、

  • ふわっと和紙をテーブルにかぶせていて、ところどころ盛り上がっている
  • 桜の枝はテーブルに対して横に置かれている

こんなところでしょうか。

a,bどちらも和紙の軽くて淡い質感、ザラメのつぶつぶ感はします。
でも、bのディスプレイの方が、リズム感があります

リズム感とはなんでしょう?
aのディスプレイは、ボワッボワッという感じのリズムですが、bのディスプレイはサラサラ、サラサラと川が流れているような感じがしませんか。

向こうからピンクの波が押し寄せてきていて、手前ではそれが青に変わって波は収まり静寂が訪れる・・・。
しかも、その波に呼応するかのように桜の枝が、波の波紋に添ってリピートしています。
ちょうどピンクと青の境目に桜の枝が来ているので、奥から手前に色がグラデーションしているようにも見えます。

このディスプレイに音を重ねると、向こうから

  • ザザザー ときて、
  • チョロ、チョロ に変わり、
  • ピチョン という音に最後は変化しています。

このリズムの変化をおもしろくしているのが、和紙のレイヤーと言えるでしょう。

売場塾では、ハーモニゼーションとかオーケストレーションとか、音楽の名前の付いたディスプレイスキルを教えていますが、まさしくディスプレイは音楽なんです。
リズムを感じさせるディスプレイ、それが趣のあるディスプレイなんです。

3.どのようにレイヤーを考えればよいのか

さて、レイヤーのつくり方をお教えします。
まずは二つの和紙の重ね方をリハーサルするといいです。
テーブルに商品を載せる前に、どのように和紙を重ねるのか、推敲するんです。

推敲とは文章を寝るときに使う言葉なんですが、私はディスプレイをつくる時にも使っています。
創作や造作、制作などの言葉は似合わないからです。
「考えながらつくる」
まさに推敲なんです。

推敲は下記の2つを念頭に置くといいです。

●構図的なポイント
・重ねる範囲(オーバーラップ)
・敷く向き(グリッド)
・構造線(リニアスキーム)

●テクニック
・ドレーピング(ドレープさせる)
・タッキング(タックを入れる)


まずは構図的なポイントの3つを念頭に入れながら、最低5つ以上は構図を考えましょう
慣れてくれば、テクニックを使ってタックやドレープも取り入れて推敲します。
ディスプレイは三次元ですが、下に敷く布は絵のように二元的に考えるので、この場合は構成ではなくて構図になります。

A,B,C,D4つの敷き布の構図

試しにAからDの、4つ作ってみました。
どれがよさそうか、吟味しましょう。

ディスプレイABの構図

AとBはタックでつくった三角形を取り入れた構図です。
・重ねる範囲はAは大きめ、Bは小さめです。
・敷く向きはAはピンクの右を下げていて、Bは折り畳みの底辺を下に設けています。
・構造線は、Aは左下に角が向かうようにつくり、Bは右上に角が向かうようにしました。

CとDはタックを入れた四角形を組み合せた構図です。
・重ねる範囲はどちらも半分弱にしました。
・敷く向きはCはピンクが上から、Dはピンクが左から斜めに入るようにしました。
・構造線は赤いライン。ピンクの中央に2.3のラインが入るようにしました。

次に展示する食器やプロップスをどこに置けば、効果的な構図ができるか推敲します。
実際に食器とプロップスを置いてみてください。
その際には、構造線(リニアスキーム)を考えながら置くといいです。
結果、採用したのはBとDでした。

Bは上のディスプレイになりました。
もみじ饅頭ディスプレイです。
三角形の部分に桜の枝を入れました。
ブーケで包んだような、おもしろい構成になりました。

敷き布のよい使い方事例

B,Dとも使ったテクニックはタッキングでした。

三角形のテーブルディスプレイの構造線
ディスプレイのまっすぐな構造線

B,Dに構造線を入れる上になります。
Bは三角形を丸く囲うようにコーヒーカップとお菓子を配置しました。
推敲の結果、青とピンクは逆にし、三角形の方向は左上に変えました。

Dは前述のようにさざ波が川下に流れてくる構造線になっています。

こんな感じで、構図とテクニックを駆使して推敲してみてください。

ちなみに、一番上の写真はDに借景を取り入れたものです。
床に波をイメージする布を敷いてみました。
ますますおもしろいディスプレイになりました。

4.構図が複雑になると解釈は多様になる

生八つ橋のディスプレイ

今度は、先ほどのBとDの構図をミックスしたディスプレイを紹介します。
お菓子は生八つ橋にしました。

これをどう解釈するかはあなた次第。
ディスプレイは見る人にとって趣がありおもしろければいいんです。

私の見立ては左から来た川が、やがては滝となってドドーッと右下に落ちていくような様です。
だから一番目が行きつく先は右の生八つ橋になるんです。
三角形が矢印のようになって私たちの視線を導いてくれるからです。

生八つ橋のディスプレイの構造線

構造線を入れると上になります。
三角形と直線に丸が加わり、より複雑になっています。

ディスプレイ鑑賞も絵画鑑賞と同じだと考えてください。
実際、絵画や写真と同じようにディスプレイも複雑な構図から成り立っているんです。
複雑ながらもリズムを感じるから心地よいんです。

テクニックとしては、タッキングの他に相似形を使いました。
皿の上の生八つ橋を見てください。
三角形が三連続していますよね。

生八つ橋

生八つ橋の三角形も考慮して構造線を入れましたのが下記の写真です。
いかがですか。
三角形が8つ繰り返しているのがわかります。
これを三角形の相似形と言います。

人は同じものが連続しているとリズムを感じるんです。
街頭の電柱、ハイウェイの照明、天井の蛍光灯、教室の机・・・。
どれも同じカタチがリピートしていますよね。
これが人間には心地よいんです。

リピートしているもみじ饅頭ディスプレイ

5.まとめ

だいたいわかりましたか。
布ものの美しい敷き方。

構図とテクニックを駆使すれば、個性的であなたらしいディスプレイができるんです。

とはいえ、最初はシンプルにレイヤーしていくといいです。
アーチスト気取りで、いきなり複雑なレイヤーにすると失敗します。

レイヤーのある敷き布

まずは先ほどのこんなディスプレイから始めてください。
慣れてきたら、時と場合によって複雑なアート表現をするといいです。
画家やカメラマンと同じように推敲してください。

私は、ここ10年間、コーヒーを飲むときに毎週違うテーブルディスプレイを作っていて、早や1000回になりました。
こんな風に日常にディスプレイを取り入れれば、本番でも苦になりません。
インスピレーションはいつもひらめくようになります。

参考に下記のブログも読むと、ディスプレイの構造がますます理解できます。
時間あったらディスプレイの知識深めてください。

●リニアスキームと三角構成

●どうして上から見て三角形にするのか

●リニアスキームの種類


また、ディスプレイのスキルもっと得たい方は、9/26のセンスアップセミナー「展示と陳列の法則」にぜひご参加下さい。
実際にディスプレイをつくっていただくオンラインセミナーです。

●9/26(木) 11時開催「展示と陳列の法則」

●毎月やっているディスプレイ・オンラインセミナー

(VMDインストラクター協会事務局)

ディスプレイをつくる手

ディスプレイ制作5つのコツ

1.ディスプレイとは何か

今日はディスプレイ制作5つのコツを教えましょう。
本来はサブテーマを入れて6つのコツなのですが、初心者向けにわかりやすくお教えします。
VMDインストラクターの方もばっちり復習してくださいね。

ディスプレイとは狭義で言う「展示」のことです。
ディスプレイ担当者は店内に展示物をいろいろな形でつくっていると思います。

  • Gケースの中のお菓子
  • ウインドウのマネキン
  • テーブルの上の雑貨
  • 棚の上の帽子
  • 突き出し棚のメガネ

など、陳列物と違って、展示物は直接お客様がショッピングカゴに入れてレジに持って行くということはないけれど、

  • 今こんなんが旬ですよ
  • これを買えばばっちりです
  • こんなことで困っていませんか
  • これを贈った相手は喜ぶはず

などなど、展示物を使っていろいろ提案してきます。

そう、ディスプレイって提案するんです。
なので、別名プレゼンテーションと私たちVMDプロは呼んでいます。

そんな提案する展示物を魅力的につくるにはどうすればよいか。
それにはディスプレイ制作5つのコツを覚えるとよいです。

2.ディスプレイ制作5つの要素

コツを要素と言い換えましょう。
ズバリ、ディスプレイ制作5つの要素は下記です。

  • テーマ
  • 商品
  • カラー
  • 構成
  • ディスプレイ用品

この5つを使ってあなたの作った店内展示物をもっと魅力的にすることができます。
VPやPPも見違えるようになります。

それではサンプルを見ながら解説していきます。
下記のディスプレイを見てください。

ディスプレイテーマ 3時のカフェオーレ1

スーパーの店員さんがインスタントコーヒーのテーブルディスプレイをつくりました。
テーマは「3時のカフェオーレ」です。
店員さんはこう言いました。

「女の子がカフェオーレを飲みながら、旅行の話をしている雰囲気でつくりました」

うーん、なんかヘンですね。
確かにシンメトリーになっていてダイナミックだけど、わかりにくいです・・・。

VMD担当であるあなたは、そう思うはずです。
そこで、どこがどう悪くてどう直せばいいのか、前述の5つの要素を使って瞬間的に考えます。
これを想起と言います。

あなたもこの想起、やって見てください。
もう写真を一度じっと見てください。
この5つの要素のうち、どれが悪いですか。

  • テーマ
  • 商品
  • カラー
  • 構成
  • ディスプレイ用品

どんな要素が悪いと想起されますか。

答えは~。

  • 商品
  • 構成
  • ディスプレイ用品

でした。
ディスプレイ制作5つの要素のうち、この3つを直せばディスプレイは完璧になります。
逆に言うと、テーマとカラーはクリアしているということです。
ディスプレイを見るとき、5つに分解して見るということを忘れないでください。

ひとつひとつ解説していきます。

●テーマ
お客様がディスプレイを見て感じること、それがテーマです。
この場合のテーマは「3時のカフェオーレ」ですので、このディスプレイを見てお客様はそう感じるか?
感じなければディスプレイを感じるように直さなければいけません。

この場合、カフェオーレの箱は見えてコップもあるので、「3時のお茶」くらいは感じそうです。
なので、まあOKです。

※テーマのことをもっと知りたい方は下記を読んでください。
○VP,PP,IPについて

 

●カラー
ディスプレイのキーカラーは3色以内で行うのが原則です。
これは服のコーディネートに由来してまして、マネキンに服を着せるときは、下記の3色でまとめるとコーディネートがうまくいくんです。

・ベースカラー ・・・ベースとなる一番面積が大きい色
・アソートカラー ・・・次に面積が大きい色
・アクセントカラー ・・・いわゆる差し色のこと

この写真を見ると、

・ベースカラーはパープル
・アソートカラーはオレンジ
・アクセントカラーはグリーン

こんな感じでまとまっているので、カラーはOKでした。

それでは直さなければいけない商品、構成、ディスプレイ用品を見ていきましょう。

 

●商品
商品のフェイスがきちんと見えているか?商品は適正数量か?
これを念頭に入れて写真を見てください。
すると、あらら。

カフェオーレの顔がよく見えないですよね。
目立つのはコップばかり。
コップは小道具なのにずいぶん目立っています。

これでは本末転倒。
コップの代わりにカフェオーレやクッキーを目立つように置きます。
これをフェイシングといいます。
フェイシングは商品特徴がわかるように置く。これが鉄則です。

※フェイシングを詳しく知りたい方はこちら。
○土産店・キャラクターショップの売場づくりのコツ

 

●構成
ディスプレイ構成のことを言います。
VMDのディスプレイはアート性がなければいけません。
「展示物」というくらいですから、ゴミや物置きのように見せるわけにはいきません。
アートを感じさせるには、審美性・演出性・創造性が備わっていなくてはいけません。
審美性とは短時に言うと美しいこと、人間なら美人のことです。
美人はプロポーションがいいですよね。
同じようにディスプレイが美人だとプロポーション、すなわち構成がいいんです。
美人を見て道行く人が振り返るように、「おやっ」と思ってディスプレイを見てくれるんです。

改めて写真を見ると、このディスプレイは残念ながら美人ではありません。
構成が左右対称になっていますが、グライダーのように横に間延びしています。
もっとキュッとタイトにセクシーに構成し直さなければいけません。

※構成について深く学びたい方は下記をクリックしてください。
○ディスプレイ美的センスアップの秘訣

 

●ディスプレイ用品
ディスプレイ用品とは小道具のこと。
ライザーやプロップスという装飾品のことを言います。
このディスプレイの場合は、カフェオーレとクッキー以外はすべてディスプレイ用品です。
コップやぶどう、ノート、テーブルクロスがそうです。
つまり売り物ではありません。

なのに、コップが堂々と「私を見て」と言っています。
商品であるカフェオーレやクッキーをのけ者にして自分だけ目立っています。

また、後ろに立てかけてあるノートも何のためにあるのか、存在意義さえわかりません。
またノートということもわからないかもしれません。

もうわかりましたか。
この場合の「ディスプレイ用品」とは、それらを適正に使っていないということでした。

※プロップスについて詳しく知りたい方はこちら。
○ディスプレイの装飾品「プロップス」とは

3.アタマの中の引き出しを使ってディスプレイを魅力的にする

さて、お待たせしました。
それでは、下記3つの要素を直したディスプレイを披露します。

 

ディスプレイテーマ 3時のカフェオーレ2

今度はBefore Afterで比べて見てください。

ディスプレイテーマ 3時のカフェオーレ3

もうわかりましたね。
どうディスプレイを直したか解説します。

●商品
商品の顔がくっきり見えるようになりました。
Beforeではコップが主役でしたが、Afterでは商品が主役になりました。

さらに、小包装のカフェオーレと箱がセットで展示されているので、2種類の味があるというのがわかりやすくなりました。

 

●構成
グライダーのように横に広がっていたディスプレイが、キュッとタイトにまとめられています。
同じシンメトリーでも、Beforeがメタボな構成になっているのに対し、Afterでは胸と腰がキュッとしまった美人ディスプレイになっているのがわかります。

しかもAfterでは、展示物が4つのカタマリになっていて、それぞれ三角構成になっています。
とてもりりしい姿になりました。

※三角形の構成はなぜよいか。それはこちら。
○ディスプレイ、なぜ三角形がよい?


●ディスプレイ用品
Beforeでは、プロップスのコップの向きがバラバラだったのに対し、Afterではきちんと前を向いています。
また、ブドウは皿に置きました。
Beforeで背後に立てかけていたノートもそれとわかるように手前に置き直しました。

これで美人ディスプレイは完成です。

 

だいたいわかりましたか。
ディスプレイ制作の5つの要素。
これがアタマの引き出しに入っていれば、どんなPPもVPも魅力的にすることができるんです。

VMDインストラクターはこうした引き出しをアタマの中に持っているので、ディスプレイを5秒見たら、どこが悪いかチェックでき、ディスプレイをつくった店員さんに教えることができるんです。

このディスプレイ要素の引き出しは、全部で55あるVMDの引き出しの一つにすぎません。
引き出しを使って売場を直すことを「フレームワーキング」と言います。
詳しくは下記をご覧ください。

●フレームワーキング(R)

4.今度はあなたの番!

ディスプレイテーマ オフィスのコーヒー1

さて、ディスプレイ制作5つの要素がわかったところで、復習です。
同じスーパーマーケットの店員さんが、今度はインスタントコーヒーのテーブルディスプレイをつくりました。

展示商品はスティック状のインスタントコーヒーで、マイルド味とビター味の2種類あります。
店員さんはテーマを「オフィスのコーヒー」として作り、スーパー近くのビジネス街のサラリーマンに買ってもらうことを想定しました。

でも、このディスプレイ、なんかヘン。
あなただったらどう直す?
下記のディスプレイ制作の5要素を使って店員さんに直し方を教えましょう。
まずはどの要素を直すべきか答えてください。

  • テーマ
  • 商品
  • カラー
  • 構成
  • ディスプレイ用品

答えは~。

  • 商品
  • 構成

でした!!

直したものはこちら。

ディスプレイテーマ オフィスのコーヒー2

改めてBefore Afterを見ながら解説します。

ディスプレイテーマ オフィスのコーヒー3


Beforeを見てください。
「なんだか雑然としているなあ」と思うことでしょう。
でも、店員さんに「キレイにしててくれ」と言っても、店員さんはどうキレイにしたらいいのかわかりません。

そこであなたはこうアドバイスします。

「テーマはなんとなくわかるし、ディスプレイ用品もサラリーマンぽくていいです。
色も黒とグレーと赤で3色以内にまとまっています」

「でも、商品と構成がよくないですね

「商品に関してはBeforeを見てください。半分の商品が寝てます
他のパッケージやコップに隠れて商品が見えていない箇所もありますよ。
パッケージはきちっと立ててデザインと商品名が見えるようにしてください

「今度は構成についてお話しします。
Beforeを見ると、商品がバラバラに置かれています
雑然としていて美しくないですよね。

まずは、ビター味、マイルド味、ビターとマイルド味のセット、スティックのみ、の4つに展示をカタマリとして分割してください
4つのカタマリはタイトに三角構成してくださいね。
そして、カタマリとカタマリの間を5.6cm隙間をつくってください。
その隙間のことをネガティブスペースと言います。
そうしたら、箱の向きを斜めに向かせて繰り返し展示してください。
これをリピテーションといいます」

こうアドバイスすると、Afterになりました。


だいたいわかりましたか。
ディスプレイ制作の5つの要素。

これらをあなたのアタマの中の引き出しに入れれば、いつでもキレイでわかりやすいディスプレイをつくることができるんです。

ディスプレイもっとうまくなりたい、と思うあなた、ぜひオンラインセンスアップセミナーにお越しください。
今月のセンスアップセミナーは8/29(木)11時から。
タイトルは、「VMDの基礎知識」です。

○センスアップセミナー「VMDの基礎知識」

どなた様もお待ちしております。(^^)

(VMDインストラクター協会事務局)

ニューヨークヤンキースのグッズ売場

阪神タイガースのアレはどうなっている?

1.阪神タイガーズのグッズ売場のアレ

阪神タイガース、リーグ優勝しましたね。
おめでとうございます。
岡田監督のアレが実現しました。
アレは、今年の流行語候補に完全に入ったと思います

今週土曜日からの日本シリーズも阪神のアレ、期待したいです。

ところで阪神タイガーズのグッズ売場のアレはどうなんでしょうか。
アレとは、グッズ売場のVMDです。
全国各地に阪神グッズ売場があって、百貨店やスポーツ店もコーナーをつくっています。
ネットで調べると少なくとも前年対比50%は売れているみたいで、10倍の売上になったところも。
全体的な経済効果も1000億近くなるみたいです。すごいですね。

今年から売場塾は銀座で行っていて、野球チームのグッズ売場も店舗診断ルートになっています。
なぜなら、東京オリンピック、WBC、ワールドカップラグビー、バスケ、パレーとスポーツチームのキャラクターグッズ売場はここ数年かなり注目されている売場だからです。
コンサートやスポーツなどのエンタメ企業にとってグッズ販売は命綱。
ディズニーランドの物販売上が全体売上の40%というのは周知だと思います。

2.ジャイアンツとヤンキーズのアレを比べてみよう

手元に阪神タイガーズの売場写真はなかったので、羽田空港で撮影した読売ジャイアンツの売場を紹介します。
上記がそうです。

次に紹介するのは、ニューヨーク空港のニューヨークヤンキーズのグッズショップ。
上の写真をじっと見てください。

次に先ほどのジャイアンツの売場をじっと見てください。


次に、左右の写真を見比べてください。
日米のプロ野球チームのVMDを比較してみましょう。違いがわかりますか。

違いは一目瞭然。
鉛直面にありました。

鉛直面とは、建築用語で、垂直面のことをいいます。
VMD用語では、バーチカルマーチャンダイジングといいます。

人は立って店内を歩いています。
視野角といって、人の目は前方を上下50度の視野角の中に収めています。
その視野角の中には売場があります。

このジャイアンツの店を見る私の目の視野角も50度で、水平に切ると上30度、下20度で売場を見ています。
つまり、売場の上の方が目に入る範囲が広いということになります。

 

すると、手前の什器を飛び越して壁も見えています。
天井までは詳しく見えませんが、壁の上部の額もよく見えています。
上の図でわかるように、視野角に入る鉛直面の売場が見えています。

両社の違いは鉛直面、壁と什器の鉛直面の商品のたたずまいが違うんです。

そのたたずまいは、

A.フェイシング
B.ハーモニゼーション
C.ポイントプレゼンテーション

に違いがありました。

 

3.日米野球チームのたたずまいの違い

日米野球グッズ売場

さあ、日米野球対決です。
たたずまいが違って見える理由の一つ、壁面のフェイシングから詳しく見てみましょう。

 

A.フェイシング

ジャイアンツはバスタオルやぬいぐるみ、ポシェットなどが置かれていますが、そのたたずまいは、積み上げられているという感じ。

片や、ヤンキーズの壁面は、カットソーがハンギングされていて服のシルエットやデザインがよく見えます。
また、マグカップやキャップのデザインも見やすく、色も統一されています。
白いマグカップで固めたり、黒いマグカップで固めたりしています。

ヤンキーズの方が断然、デザインやシルエットが見やすく、わかりやすいです。
巨人はバスタオルに選手の名前があるみたいですが、積んであるバスタオルが邪魔してそれが読めません。

 

B.ハーモニゼーション

日米野球グッズ売場

次に壁面のハーモニゼーションを見てみましょう。
ハーモニゼーションとは、「商品をリズミカルに陳列するテクラック」のことです。
そう、陳列には魅力的に見せるテクニックがあるんです。

ジャイアンツの陳列は、どさっと積んであるんでリズミカルではないですね。
バスタオルもそうですし、ポシェットも真横一線にひな壇に並んでいます。
倉庫っぽい感じです。

ヤンキーズの方を見ると、マグカップや帽子が左右対称に陳列されているのがわかります。
しかも、真横一線ではなく波型に見えるように陳列されています。
陳列に凹凸があるんです。
くねくね波型に陳列されていて、アクティブな陳列。
しかもシンメトリーに並んでいるので、とてもきれいなたたずまいに見えます。

波型の陳列ってリズミカル。なんかワルツのようです。
アンドゥトロワみたいな感じの陳列、いいですね。

 

C.ポイント・プレゼンテーション

日米野球グッズ売場

3つ目の理由はポイント・プレゼンテーション。
これもVMD用語です。展示ディスプレイと訳してください。

VMDでは陳列のことをIP、展示のことをPPというんです。
詳しくは下記を一読ください。

●PPとは

島什器の陳列と展示を見てみましょう。
まずはジャイアンツ。

展示物であるPPは、エンドのPOP上部にある二つのバスタオルのようです。
キティとのコラボバスタオルですね。
後はすべて陳列で展示物がありません。片やヤンキーズの島什器の展示物はトルソ。
トルソとは半身のボディマネキンのことです。

I LOVO NYのTシャツがかわいいですね。
マグカップも三角形に積まれています。

確かにTシャツはたたんで積んでいるけれど、そこかしこに展示物があります。
ボディ2つに三角形に展示しているマグカップが2つ。
つまり、ヤンキースの方がジャイアンツよりも展示物が2倍多いんです。

3.オーケストレーションが歩行者の興味を引く

まとめです。

下記の3つの要素とは、オーケストレーションを構成する要素だったんです。

A.フェイシング
B.ハーモニゼーション
C.ポイントプレゼンテーション

オーケストレーションとは、壁面全体のディスプレイのことで、これを魅力的にすればするほど、店舗イメージもよくなります。
そのためには、ぜひ上のA,B,Cをしっかりつくってください。

 

お菓子売場日米対決

今度は、日米お土産売場対決行ってみましょうか。
上の写真右がハワイのお菓子売場、左は羽田空港のお菓子売場です。
どう違いますか。3つの要素で分析してみましょう。
詳しくは解説しませんが違いは判ると思います。

日米で特徴的なことは、アメリカの売場は商品は立てておいてあるけど、日本は寝かせて置いているんです。
ここが大きな日米の違いなんです。

オーケストレーションについてもっと知りたい方は、下記のブログもご覧になってください。
写真で詳しく解説しています。

●オーケストレーションとは


今年のWBCは日本が勝ったけれど、野球グッズ売場VMDでは日米どちらが上かというと、アメリカかもしれません。
巨人ファンの皆さん、ごめんなさい。
私はほとんど野球は見ないのですが、聞かれれば巨人ファンなので、ぜひ巨人グッズ売場よくしてほしいです。

全国のスポーツチームグッズ売場の皆さん、ぜひVMDを活用して魅力的な売場にしてくださいね。(^^)


(VMDインストラクター協会事務局)