1.店舗ブランドとは
小売店の方はどんな人も、どこかのブランドに所属していると思います。
今日は店舗ブランドの話をします。
店舗ブランドとはなんでしょう。
みなさんが思いつくのは、グッチやルイ・ヴィトンといった、百貨店や銀座通りにある、欧米の有名なブランド店舗だと思います。
確かにそうですが、高くて高価なものを売っている店がブランドというわけではありません。
セブンイレブン」もブランドですし、マツキヨもブランドです。
「おかしのまちおか」もブランドだし、「はせがわ酒店」もブランドです。
もっと言うと、私の故郷富士宮市にある「ハトヤ」もブランドだし、「芙蓉堂(ふようどう)」もブランドです。
ハトヤは玩具店で、芙蓉堂は文具店です。
(残念ながら、ハトヤは昨年閉店してしまいました)
店舗ブランドは、店構えが豪華ということでもありません。
倉庫のような雑多な店もありますし、段ボールを積み上げただけの店もあります。
ディーンアンドデルーカでさえ、什器はエレクターのような、物置に使うようなデザインのものを使っている店舗もあります。
店舗ブランドを定義すると、下記になります。
●生活者の心の中に定着した店舗の特定イメージ
「マツモトキヨシ」
「ABCマート」
「伊勢丹」
「セブンイレブン」
「カインズ」
みんなが知っている上記店舗をイメージしてみてください。
心の中に何かが沸き起こったと思います。
店内所せましと並べられた商品群かもしれません。
ウインドウにずらりと並べられたマネキンかもしれません。
靴の調子を見てくれた店員の笑顔かもしれません。
それが店舗ブランドイメージというものです。
特にチェーン展開している店は、詳しい店舗デザインや接客のトーンアンドマナーが確立されているので、基本的には全国津々浦々どこの店舗に行っても、同様のイメージを受けると思います。
北海道のユニクロはいいけど、沖縄はダメ、ということはないと思います。
(VMD専門家としてのミクロの視点では東京のMDPはどこよりもいいとは思いますが)
さらに具体的に言うと、ブランドイメージは店舗コンセプトを土台にしています。
店舗コンセプトとは「どんな店なのか」を表す言葉なのです。
これを話すと長くなるので、別の機会にお教えします。
今回は、店舗ブランド業態を見ていきます。
2.メーカーブランドと小売ブランド
店舗ブランドに関しては、店を構え、いろいろなメーカー・卸から商品を仕入れ、店頭に並べる小売ブランドがあります。
代表的な小売りチェーン店ブランドは下記です。
- ドラッグストア・・・マツキヨ、スギ薬局、アインズ&トルペ
- 百貨店・・・三越、伊勢丹、高島屋、阪急
- ホームセンター・・・カインズ、島忠、DCM、ジョイフル本田
- 書店・・・蔦屋書店、丸善書店、三省堂、ジュンク堂
- コンビニ・・・セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート
- 家電店・・・ヤマダ電機、ビックカメラ、ケーズデンキ、ヨドバシカメラ
しかし、日本には古くからメーカー系列店というものがありました。
これはメーカーが確立した小売店チェーン形態で、直接メーカーが経営していないものの、VMDを含めた、販促支援、販売支援、経営支援、商品ケアを行っていました。
電気店でいうと、下記のような店舗ブランドになります。
- 松下電器・・・ナショナルショップ
- 日立・・・日立チェーンストール
- 東芝・・・東芝ストアー
- 三洋電機・・・サンヨー薔薇チェーン
- ソニー・・・ソニーショップ/ソニー特約店
昭和時代から続くこのブランド店舗、サンヨー薔薇チェーン以外は生き残っています。
ものづくり立国の日本のメーカーが小売業界で強い地位を占め、売場づくりまでを主導するという、メーカー系列店方式はまだ健在でした。
「あなたの街の電気屋さん」なるメーカー系列店において、顧客は以下のメリットがあります。
- 購入相談
- 配送
- 設置
- 使い方説明
- 修理
- 買い替え
- 住宅設備相談

街の電気屋さんは、ほとんど地域の商店が経営している個店です。
しかし深沢電気店、奥田電気店という個人店のブランド店舗なく、写真のようにほとんどかメーカーブランドに依拠していました。
店の「看板」は文字通りメーカーが握っていたのです。
カメラ店などがわかりやすいと思います。
今でもある街のカメラ屋さんは昭和レトロたっぷりの下記のような店が存在しています。
「イワモトカメラ」と看板は掲げているものの、ほとんどフジカラーのお店ですね。

同じように、昭和当時の小売店は、スポーツ店もパン店も個人ブランドではなくて、ブランディングはメーカーに大いに頼っていたのです。
詳しくはスポーツメーカー、ミズノのVMDインストラクターに取材した記事を参考にどうぞ。
●メーカーのブランディング戦略
実は売場塾を受講する生徒は、今でもこうした系列店・特約店向きのVMD指南をしているメーカーの方は多いです。
私が広告代理店に勤務していたころは、このような小売店支援を「ディーラーヘルプ」と言ってました。
メーカーのVMDインストラクターは、下記のディーラーヘルプ業務をしています。
- 店舗コンセプト設定
- 店舗デザイン
- 什器デザイン
- 展示・陳列指導
- ゾーニング・導線
- 店内体験の企画
- POP等店内ツール作成
- 広告トーンアンドマナー設定
こうしたメーカーの小売店向けVMD活動は、下記も参考になります。
直接売場塾卒業生に取材しています。
●カシオ計算機VMDの小売店VMD支援と直営店
●シャルマンVMDのメガネ店VMD支援
●クロバーVMDの手芸店支援
いかがですか?
昭和時代のメーカーVMDは系列店に看板やPOPを取り付けるのが主な業務でしたが、令和時代のメーカーVMDの業務は店舗ブランディングまで多岐に渡ることがわかります。
メーカー系列店で有名な店舗ブランドは下記です。
今後はさらに進んで、メーカー・小売り協業型の店舗が増えていくことでしょう。
- アヴェダ →ヘアサロンは「店名+AVEDA」ブランドに統一
- 山崎製パン →パン店は「ヤマザキショップ」「ディリーヤマザキ」ブランドに統一
- アルビオン →化粧品店を「ALBION DRESSER」「ATELIER ALBION」ブランドに統一
3.時代はインショップブランドに
そんなわけで、商店街のイワモトカメラ店も高田化粧品店もメーカーからブランディング支援を受けながら、ともに成長してきたのです。
ところが、現在は専門店・量販店の群雄割拠時代です。
メーカー系列の電気店というよりも、ヤマダ電機、ビックカメラといった家電量販店が、メーカー系列の化粧品店というよりも、マツモトキヨシ、ウエルシアといったドラッグストアが業界を席巻するようになりました。
もちろんメーカーは、そんな量販店に商品を卸していますが、系列店と同じようなアプローチではありません。
ヤマダ電機の袖看板に「パナソニック」と謳うことはできません。
ヨドバシカメラにしても外観にある多数の広告看板の一部としか自らのブランドを謳えないのです。

では現在、メーカはどのように自社ブランディングを店舗で行っているのか?
結果はショップインショップ・ブランディングでした。
ビックカメラやヨドバシカメラに行ってみてください。
ライカ、アップル、BOZE、ReFa、ダイソンの売場は、競合他社と違うことがわかります。
それは店内店、つまりショップインショップとなっていて、家電店フロアの中に自社店舗があるように、売場をブランド化しているんです。
典型的なのが、アップルの売場でしょう。
写真のように、家電フロアの中にアップストアがすっぽりはまっています。

狭いフロアの売場でも、下記のように什器と背面パネルで、同業他社の売場と差別化しています。

このような売場表現をグランドプレゼンテーションと名付けています。
差別化できる、メーカー店内店の空間デザインをいいます。
詳しくは下記を参照ください。
ではなぜ、メーカーは自社売場をインショップ化した方がいいのか?
それは量販店内での他メーカーとのポジションを1ランク上に設定できるからです。

上図を見てください。
あなたはオーバルノートというパソコンメーカーです。
家電フロアには、「パソコン」というゾーンがあり、「ノートパソコン」というカテゴリーがあります。
ノートパソコンを買うお客様は、「ノートパソコン」というカテゴリー売場にきて、AからGのブランドから好みの商品を選びます。
あなたの商品は他社と同じ土俵に置かれていて、ブランド認知、価格、デザイン、機能、用途、あるいは接客を通じて吟味されながら、選ばれます。
つまり、カテゴリー内競争にさらされています。
ところが、一たびカテゴリーから抜け出して、ショップインショップとして売場をつくれば、あなたのブランドはポジションが一気にカテゴリーと同等かそれ以上に抜きん出ます。
それが図の右側です。
図左側では「ノートパソコン」というカテゴリーから「Oval NOTE」というブランドを選択することになっていて、あなたは常に競合にさらされているレッドオーシャン状態です。
しかし図右側では、競合に対して1ランク優位にブルーオーシャン状態になっています。
当然、あなたのブランドがマーケティング戦略において優位なら、「Oval NOTE」インショップがさらに人を集めることができますし、ブランド認知がそれほどなくても、客は興味を引き、売場に近づいてくれます。
インショップブランドになれば、カテゴリーと同等かそれ以上の地位をフロア内で占めているのが、お客様の見た目でわかるからです。
しかも、その売場には、貴社製品しかないのです。
後は、ここに来てくれたお客様をがっかりさせなければOK。
VMDを活用をすれば最大限の買い上げ率を確保してくれます。
同じように、GMSの玩具フロアで有利に立ちたいタカラトミーは、「プラレール」や「トミカ」のショップインショップを立ち上げています。
電車の玩具ブランド、自動車の玩具ブランドとして他社をさらに引き離しています。


ということで、街の個店自体をメーカーブランドにする時代から、量販店・専門店内にメーカーブランド店舗をつくる時代に移行してきたのです。
4.商店の店舗ブランドディングのこれから
主戦場が量販店・専門店に移った昨今、地域のお店はどのようにブランド展開をしなければいけないのか?
わかりやすくカメラ店の例でお話しします。
前述したように、カメラ店はカメラやフィルムメーカーのブランディングの代理になっていました。
メーカーにあまり頼らない時代の個店店舗ブランディングは、コンセプトから見直さなければいけません。
つまり「どんな店を目指すか」の問いから始めなければいけません。
参考になるのが、自由が丘のポパイカメラです。
従来の「カメラ店」ではなく「写真を楽しむ店」というポジションになっており、木製什器、写真、フォトフレーム、アルバム、雑貨などを組み合わせ、ライフスタイルショップに近い空間をつくっています。
●ポパイカメラ
街のカメラ店というと、親切丁寧に接してくれて、写真の撮り方やスポットを教えてくれる、いつでも相談にのってくれるイメージがあります。
これをディープにしたのがポパイカメラということでしょう。
以前私がお世話になったコメ兵さんのカメラ部門でも、それに近いようなコンセプトでリモデルを果たしました。
●株式会社コメ兵様VMD導入事例
同様に、釣具チェーン店は上州屋やイシグロなど量販店が跋扈していますが、地域の釣具店は生き残っています。
これも、店が地域の漁場をよく知っていて、スポットに合わせた釣り方や道具の選び方を親身になって教えてくれる、ポパイカメラのような存在になってるからでしょう。
広い品揃えよりも、専門部分をディープに深堀したプロショップみたいな店が生き残っていくのではないかと思います。
手芸店や文具店、酒店なども、商品 + 情報 + 店員の経験 + コミュニティといった具合に、量販店ではできないポジショニングを設定していけば、量販に伍すことができるでしょう。
問題は「快場」。
これ、伸びしろがありそうです。
店内の整理整頓から始めた方がいいかな、という店をよく見ます。
予算がなくても、什器移動してのゾーニングや導線の確保、展示や陳列の改善などは予算ゼロでもできますので、すぐに実行した方がよいです。
ぜひ、地域で愛される一番店を維持するために、VMDを学びに来てくださいね。
みっちり地域一番店をキープする「快場づくり」をお教えします。
まずは毎月開催してるオンラインVMDセミナーでお会いしましょう。
今月は、8月27日(木)開催です。
●センスアップセミナー「POP活用体系」
なお、このブログは続きがあります。
「店舗ブランディングその2/ カテゴリードライブとアートドライブ店舗」に続きます。
お楽しみに!!
(VMDインストラクター協会事務局)

















































































